関係者様

寒気ひときわ厳しい毎日です。皆様いかがお過ごしでしょうか。

では、山崎通信をお届けいたします。
皆様のご意見やご感想も是非お寄せいただければと思います。
お知り合いの方にも、このメールを転送いただければ幸いです。

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____山__崎__通__信_______________2008.1.24_
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┃道路について徹底的に議論せよ
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《戦後復興期の財政のあり方から今こそ脱却を》
 2008年の通常国会が始まりました。大きな焦点になりそうなのが、ガソリン税
 を引き下げるのか現状を維持するのか、という道路財源の暫定税率の問題で
 す。

 でも、本当の問題は、それにとどまらないはずです。なぜなら、終戦から7年
 後の1952(昭和27)年に決められた道路建設の財源のあり方こそ、戦後の財
 政と政治のシステムそのものです。まさに自民党のビジネスモデルであり、
 戦後体制です。

 これまで、小泉純一郎元総理は「自民党をぶっ壊す」と言い、安倍晋三前総
 理は「戦後レジームを変える」と言いました。しかし、戦後体制の本丸である
 はずの、道路のあり方は変わりませんでした。

 日本が、本気で、戦後の復興期に作られた財政のあり方から脱却し、21世紀
 の現実に合った政治と経済に転換しようとするならば、道路のあり方を変えな
 くてはなりません。今の道路のあり方が作られた1952年には、国会で徹底的
 な議論が行われました。56年後の今年の国会でも、時間をかけた徹底的な議
 論をすべきです。もし、まともな議論もせずごまかしに終わったら、日本の
 没落は止まらないでしょう。

《始まりは青年田中角栄が提案した議員立法》
 戦前から1952年までは、日本の道路建設のあり方は、至ってシンプルかつ
 常識的なものでした。予算といえば、一般財源しかなかったからです。
 政府は、入ってくるすべての税金などの収入の中から、道路に配分すべき額
 を、予算編成で割り振って支出しました。もろもろの支出とのバランスの中で、
 道路に出すべき額を決めていました。予算といえば一本であり、最初から使
 い道の決まった税金はなかったのでした。

 そして、道路は政府が作るものでした。国道も地方道も「天下の公道」でし
 た。私道ではないのですから、無料でした。

 ところが、戦後の日本では、多くの新しい道路が、一気に必要になりました。
 敗戦で日本中の大きな都市は焼け野原になり、植民地もすべて失いました。
 国土を復興し、経済を発展させなければ、国民は食べていけません。
 先見の明のある人は、鉄道の次は自動車だ、米国のような自動車社会になれ
 ば日本の経済は伸びる、と思いました。そのために、全国に舗装道路を作る
 必要が出てきました。

 しかし、壁に突き当たりました。1952年の道路整備費は約200億円しかありま
 せんでした。それでは全国に新しい道路を作るのには足りませんでした。

 その時に、それまでの常識を覆す新しい提案をしたのが、青年議員田中角栄
 でした。まず、ガソリンにかけていた税金の収入をすべて道路の整備に使う、
 という議員立法を提案しました。これは国会の内外から大変な反発を招きま
 した。あらかじめ税金の使い道を「特定」する「目的税」など、財政の原則に
 反する、そんなことは政府の予算編成権を奪う、憲法違反だ、と学者を含め
 た大論争に発展しました。

 しかし、田中角栄議員はひるみませんでした。ほとんどの答弁を自分で行い
 ました。道路がなければ日本は発展しない、日本人は腹いっぱい食べられる
 ようにならない、その訴えが国会議員の多数を賛成に回らせたのでした。
 しかし、ガソリン税を道路にすべてつぎ込むのは、あくまでも道路建設の財源
 が足りないための「臨時措置法」でした。将来は、ガソリン税は、道路以外に
 使えるようになるはずでした。

《借金を返せば名神・東名は無料になるはずだった》
 1952年に、田中角栄議員はもう1つ常識外の提案をしました。自動車専用の
 道路を作り、料金を徴収する。その料金収入を自動車道路の建設費用に充
 てていく、というものでした。これも大反発を招きました。
 天下の公道で料金を取るとは何事か、関所を設けた中世に逆戻りするのか、
 という批判が殺到しました。しかし、これも財源が足りないゆえの「特別措置
 法」として認められました。将来は、有料道路は無料の天下の公道に戻すは
 ずでした。

 さらに、日本にも本格的な高速道路が作られることになりました。この時も、
 「特別措置」として、高速道路は借金で作り、借金を返すまでは通行料金を
 取ることになりました。借金を返したら、無料になるはずでした。

 1956(昭和31)年には、冷戦時代のアジアの同盟国として日本を発展させよう
 という、米国の強力な支援を得て、日本の名神・東名高速道路計画がスタート
 しました。この年日本道路公団ができました。

 米国は、ブルッキングス研究所を通して高速道路の建設技術を提供しました。
 しかし、日本には名神・東名の建設に充てる財源がありませんでした。
 そこで、米国は世界銀行を通じて3分の1の建設費を貸しました。

 借金を返済するために、名神・東名では通行料金を取ることになりました。
 あくまで、「特別措置」でした。借金を返せば、米国の高速道路のように名神・
 東名は無料になるはずでした。

《30年間も続いた「暫定税率」をどうするか》
 それから日本は変わりました。自動車社会が訪れ、名神・東名は太平洋ベルト
 地帯の大動脈になりました。1968(昭和43)年には、ドイツを抜いて、日本は
 世界第2位の経済大国になりました。

 あれほど足りなかった道路財源も、田中角栄総理が誕生した1972(昭和47)年
 には年間2兆円になっていました。その20年前に田中角栄議員がガソリン税を
 作ったころの実に100倍です。

 それほど道路財源が豊かになったのですから、「臨時措置」や「特別措置」を
 やめて、原則に戻ったでしょうか。つまり、多くの欧米諸国のように、ガソリ
 ン税の収入を年金や環境など道路以外に使うことや、高速道路や有料道路
 を借金で作るのをやめて無料にしたでしょうか。答えはノーでした。

 それどころか、ガソリン税などの税金をさらに引き上げ、そのすべてを道路
 の建設に回すことが始まりました。臨時措置の上の「暫定税率」です。
 この暫定措置が30年も続いてきて、今年の国会で焦点になっているのです。

《利益を分け合う鉄の三角形の王様が道路》
 道路のやり方が、財政のあらゆるところに広がりました。行き先の決まった
 特定財源や特別会計があふれました。予算編成で、時の政府が優先順位を
 つけることが難しい奇妙な財政の仕組みができました。

 税金の行き先をあらかじめ縛るのは憲法違反だ、そんな正論を角栄さんが
 論破してから、誰も不思議には思わなくなりました。臨時措置や特別措置が
 いつまでも続くことが当たり前になりました。そして、特定の予算の配り方を
 通じて利益を分け合う政官業の鉄の三角形と言われるものができました。
 その中でも、王様は道路でした。

 いまや、日本の道路建設への支出は、一般道路と高速道路の合計で年間
 8兆円余り、11兆円の消費税収に迫る巨額です。ドイツ、英国、フランス、
 イタリア4カ国の道路予算の合計です。日本の道路総延長はドイツの5倍、
 国土面積当たりの道路はOECD(経済協力開発機構)諸国でトップです。
 金額と量では世界有数の道路大国です。

 それでいて、道路計画がなかなか完成しないのが日本です。地域の住民は
 大変な不便を耐え忍んでいます。高速道路は作りだして50年以上たつのに、
 政府が昨年末に発表した中期計画では、まだこれから約4,600キロを作らな
 くてはネットワークが完成しません。なんという遅さでしょう。

 1969年にできた東名高速道路は、工期わずか6年で完成しました。しかも、
 総工費はわずか3,425億円でした。日本で最も人口が多く地価が高い東京
 名古屋間が、こんなに早く安くできたのです。予算が足りず世界銀行の監視
 があった時でした。

《安く早く道路を作った地域が報われる仕組みに》
 今は、道路は権力の道具です。道路の目的は、早く安く作ることから、出来る
 だけ完成を長引かせ出来るだけ予算を落とすことに変わりました。
 道路を早く安く作った地域が報われる仕組みに変えなければ、予算のムダ遣
 いはなくなりません。

 巨額の財政赤字を抱える今の日本に、道路の「臨時措置」や「特別措置」の
 ムダ遣いを続ける余裕はないはずです。しかも、旧道路公団の借金のように、
 早く処理しないと破裂するものまで残っているのです。年金、医療、教育、
 子育て、国防、環境、食料やエネルギーの確保…。
 予算が必要な分野はいっぱいあります。

 道路に戦後復興を懸けたた56年前の田中角栄議員の情熱に匹敵する論戦を、
 今度の国会で見たいものです。

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