関係者様

春浅くいまだ風がつめたく感じられます。皆様いかがお過ごしでしょうか。

では、山崎通信をお届けいたします。
皆様のご意見やご感想も是非お寄せいただければと思います。
お知り合いの方にも、このメールを転送いただければ幸いです。

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____山__崎__通__信_______________2008.3.6__
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┃高速道路の借金爆弾を処理せよ
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《実態に即して国の借金に切り替え財源確保を》

 衆議院での道路予算の審議がひと月もたたずに終わりました。今年度の審議
 は、今後10年間の道路財源の方向を左右するものです。

 それなのに、審議日程が全く足りません。56年前に田中角栄議員が100日も
 答弁して議員立法で作った道路特定財源のあり方を、数回の審議と強行採決
 で決めるのです。そんなことでは、財政だけでなく、日本経済も再生のチャン
 スを失います。

《借金をして3,500キロの高速道路を新たに建設》
 昨年11月には国土交通省から「道路の中期計画」が発表され、今後10年間に
 わたって、59兆円の道路財源が必要であるとされました。この計画が、ガソ
 リン税などの「暫定税率」を今後10年も維持し、その財源を道路の整備に充
 てる根拠です。

 ところが、国会審議の中で矛盾が明らかになりました。衆議院予算委員会で
 は、民主党の馬淵澄夫議員によって、最新の交通センサス調査の結果が隠
 蔽され、道路需要が減っている実態を隠されたことが明らかになりました。

 最新のデータを使って計算すると、建設が必要な道路は大幅に減るでしょう。
 国民の必要に応じて道路を作るよりも、道路財源を確保することを優先した
 実態が明らかになったのです。

 でも、もっと深刻な問題があります。それが、高速道路の借金の問題です。
 借金は、返済できなければ膨らむからです。

 実は、「道路の中期計画」の中には、高速道路などの高規格幹線道路を全
 国で1万4,000キロまで作ることが盛り込まれています。このうち高速道路は
 1万1,520キロです。現在の高速道路が約8,000キロですから、これから3,500
 キロの高速道路を、今まで通り借金で作るのです。

 これまで、高速道路の通行料金を取るのは、今ある40兆円の借金を返済す
 るためだ、これから借金は減る、と聞かされてきました。

 現実は全く違います。「道路の中期計画」が発表される前から、道路公団を
 引き継いだ独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構(以下、高速道
 路機構)と高速道路会社という組織は、これから9,342キロまで、約1,300キロ
 の高速道路を作り、そのために約20兆円の借金を新たに抱えることを決めて
 います。
 (債務の返済状況などについては、高速道路機構の以下のホームページでも
 見ることができます)
  http://www.jehdra.go.jp/tsuika18.html

 そのうえに、「道路の中期計画」に従って、予定路線まですべて作ればさらに
 2,200キロ、国土交通大臣が承認した基本計画まででも、さらに1,300キロの
 高速道路を作ることを決めているのです。そうなれば、距離比例で考えれば、
 少なくともまた20兆円の借金を抱えることになります。

《金利上昇の種は今後目白押し》
 政府が法律で決めているように、そんな巨大な借金を2050年までに返済し、
 約束通り高速道路を無料開放できるのでしょうか。

 ほとんど不可能です。第1の問題は、高速道路の採算です。新しい路線は過
 疎地帯を走りますからほとんどが大赤字になります。交通需要自体が減って
 いることも分かっています。並行して走る一般道は混雑しているのに、通行
 料金が高すぎて全国の高速道路の65%が使われていないことは、「道路の
 中期計画」自体が指摘しています。

 借金で作り通行料金で返すという方式は、名神・東名のような人口過密地帯
 以外では成り立たない仕組みなのです。

 さらに大きな問題は、将来の金利上昇です。政府が決めた計画では、高速
 道路の借金返済は2050年まで続きます。現在の高速道路の借金の金利は
 幸い1%台の低いレベルです。そのため返済が容易に見えます。

 しかし、この超低金利は、ここ15年の特殊な状況によるものです。1980年代
 を通じて、国債金利でさえ政府が想定する4%の金利をほとんどの期間で上
 回っていました。さらに、70年代までのインフレ期には、金利は10%近くまで
 上昇していました。

 これからは、金利上昇の種になるものが目白押しです。途上国の高度成長に
 よる世界的なインフレ傾向の始まり、高齢化による日本での急激な貯蓄率の
 低下と財政赤字などです。

 金利が想定を超えたとき、今でさえ100兆円を超える予定の高速道路の借金
 と金利の支払いの合計は、危険な財政負担の爆弾に変わってしまいます。
 借金をしている独立行政法人である高速道路機構は売却する資産もなく、職
 員もわずか85人です。借金を返済できなければ、損失は国民の負担になりま
 す。

《道路財源や霞が関の“埋蔵金”で借金を返済すべき》
 片方で、年間2兆6,000億円のガソリン税などの暫定税率分などの巨大な道路
 財源があります。また一方で、霞が関の埋蔵金と呼ばれる、27兆円の財政融
 資資金特別会計の積立金などがあります。

 今、国が高速道路の借金の返済を肩代わりし、そうした財源を使って高速道
 路の借金を返済すべきときです。高速道路機構の40兆円の未償還残高のうち、
 政府の貸し付けや出資、政府保証など、政府から信用供与を受けているもの
 が34兆円もあります。

 民営化と言いながら、借金は国の丸抱えなのです。“機構”という不明朗な
 国営ペーパーカンパニーへの借金の「飛ばし」をやめ、実態通りに国の借金
 に切り替え、そのうえで返済の財源を確保すべきです。

 もちろん、そのときは通行料金を取る根拠はなくなりますから、民営化した
 高速道路会社や高速道路機構は廃止できます。

 政府のように、道路特定財源を今まで通り道路につぎ込むことでは、道路
 問題は解決できません。かといって、民主党案のように、暫定税率を廃止し
 てしまっては、高速道路の借金返済の財源を確保するのは難しくなります。

 財源を確保し高速道路の借金を返済しない限り、道路の問題も日本経済の
 問題も解決できないでしょう。


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