関係者様

日差しもすっかりやわらかくなりました。
皆様お元気でいらっしゃいますでしょうか。

では、山崎通信をお届けいたします。
皆様のご意見やご感想も是非お寄せいただければと思います。
お知り合いの方にも、このメールを転送いただければ幸いです。

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____山__崎__通__信_______________2008.3.19_
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┃道路問題の先送りは出来ない〜不良債権問題の失敗を繰り返すな〜
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 道路問題は不良債権問題によく似ています。

 まず共通するのは、日本が自分で作り出した、国内問題であることです。
 黒船や石油ショックのように、外から襲いかかったものではありません。
 外からの脅威には無類の強さを発揮する日本人も、内なる病の解決を先送り
 するうちに、手がつけられないほど問題が巨大になりました。

 2つ目の共通点は、借金問題であることです。多少経営を改善しても金利がか
 さめば借金は膨張します。最大の道路問題である高速道路の問題は、不良債
 権問題そのものです。

 3番目は、ごまかしても、時間を稼いでも、経済は衰退を続けたことです。
 不良債権問題は日本の金融システムをマヒさせ、道路問題は日本の国土を
 過密と過疎にしてしまいました。ことに、国土の均衡ある発展といいながら、
 あらゆる交通手段が整う大都市と、高くて使えない高速道路しか長距離の移
 動手段がない大半の国土に分けてしまいました。

 不良債権問題と同じように、道路問題も、失われた15年がたたないと解決し
 ないのでしょうか。

《90年代、適切な対応で力強く復活した欧米経済》
 私が高速道路無料化を提案してから、ちょうど7年目になりました。
 日本経済のタイムリミットが来ていることをヒシヒシと感じます。
 不良債権問題の過ちを繰り返さず、今解決すべきです。

 不良債権問題については、苦い思い出があります。

 1990年代初めのころでした。当時、私は米国で資本市場の仕事に携わってい
 ました。今によく似た経済環境でした。米国では、1980年代終わりから不動産
 が下落を続け、住宅金融を担ったS&L(貯蓄貸付組合)の多くが経営破綻し、
 シティバンクのような大手銀行も経営危機に瀕していました。

 この時は、不動産バブルが崩壊したのは世界的現象でした。欧州諸国も日本
 も不動産の下落と金融機関の経営危機に直面していました。

 追い詰められた米国政府は、公的資金を投入してS&Lの整理を断行し、損失を
 政府が負担して預金者を守りました。93年末に処理は、ほぼ終わりました。
 欧州諸国も銀行の国有化や財政資金の投入によって不良債権問題を処理しま
 した。私もRTC(米国整理信託公社)の不良債権処理のビジネスやシティバンク
 のアセットバック証券の業務に携わりました。
 その中で、不良債権処理の公式のようなものが見えてきました。

 その後、欧米諸国では力強い経済成長が始まりました。そして、ウィンドウズ95
 が出た1995年から2000年まで株式市場は上昇しました。それまで遠い国だっ
 た中国にも米国企業は大挙して進出し、グローバリゼーションの時代も始まり
 ました。

 そんな1990年代の初め、米国人に日本のバブルの崩壊と経済の行方について
 聞かれて、私は自信を持って答えていました。

 「日本にとっては、不良債権問題の解決は米国よりも簡単なはずだ。巨大な対
 外資産を持ち、不良債権処理を行う体力は日本には十分にある。米国や欧州
 の経験に学んで、速やかに財政資金を投入して処理し、経済は急回復を遂げ
 るに違いない」

 世界最大の債権国である日本こそ、世界同時のバブル崩壊から最も早く抜け
 出す力を持っている、と思えたからです。

《経済の“生活習慣病”には弱い日本》
 ところが、私の予想は見事に外れました。日本は、まずは不良債権問題の存
 在を認めず、次に渋々存在を認めた後も何とかなると先送りし、ようやく処理
 した時には欧米から10年遅れていました。

 1996年の金融ビッグバンも、翌97年の山一証券、北海道拓殖銀行、そして98
 年の日本長期信用銀行の連続破綻ですっかり吹き飛びました。東京がニュー
 ヨークやロンドンと並ぶ世界の金融の中心になるどころではなくなりました。

 金融ビッグバンが日本経済の体質を変える、という私の期待は見事に裏切ら
 れました。今では日本は、国際金融市場としてはシンガポールや香港にも置い
 ていかれています。

 日本は、外からのショックには強いけれど、自ら招いた生活習慣病を治す力は
 とても弱いことを、不良債権問題を見ていて、私は思い知りました。

 そんな中、日本を変えることを宣言して小泉政権が誕生し、大いに期待しまし
 た。特に、財政投融資という、郵貯や簡保や年金のお金を国が特殊法人に貸
 し付ける仕組みが経済をゆがめているという考えに共鳴しました。

《金融マンとして直感した道路公団民営化の愚》
 しかし、2001年12月に、道路公団民営化が閣議決定された時に唖然としまし
 た。道路公団の借金を返済し、道路公団を廃止して、高速道路無料化を実現
 し、特殊法人改革と経済成長を同時に達成するものだと思っていた私は、また
 しても自分の甘さをかみしめました。

 なんということを決めたのだろう。日本経済復活の最後の決め手である高速道
 路無料化でなく、高い料金を半永久的に取り続ける民営化を決めるとは。
 その時の言いようのない失望を今でもはっきり覚えています。これでは株は上
 がらない、金融マンとしての直感でした。

 小泉政権が発足した2001年4月26日、日経平均は1万4000円を挟んで動きまし
 た。今の日経平均はそれを下回ります。日本経済は米国のサブプライムロー
 ン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題の影響が一番少ないはずなのに、
 昨年のピークから見て、日経平均は米国のダウ平均の2倍以上の下落率を示
 しました。いかに日本経済の体質が弱っているかの証明にしか見えません。

 道路と国土の問題は今も残っています。もちろん高速道路の借金もそのままで
 す。それどころか、今の40兆円の借金の上に、建設計画が決まっているだけで
 も、2020年までで20兆円、そして政府の「道路の中期計画」に沿って計画を実
 行すると、さらに20兆円、つまり新たに合計40兆円の借金をして過疎地にまで、
 採算など関係なく高速道路を作る予定です。そんな路線の通行料金は高過ぎ
 て、地元ではほとんど利用できないのは明らかです。巨大なムダづかいと宝の
 持ち腐れが続きます。

《地方が東京に頼り続ければ財政は破綻する》
 そんなことでは、借金は返せません。あらゆる交通手段が揃った東京と、自動
 車しか交通手段のない地方との格差は広がる一方です。そして、これから日本
 一高齢化が進行し自分の財政が大幅に悪化する東京に、地方が頼り切ること
 を続ければ、日本の財政全体が破綻していくことは明白でしょう。

 今や家計貯蓄率が3%台にまで下がった日本国内には、将来の財政赤字を支
 える力は残っていないでしょう。かといって、海外の資金に財政赤字を埋めて
 もらおうとすれば、国債の金利を大幅に上げるしかなくなるのです。
 そうなれば景気は大幅に悪化します。

 そうなる前に、高速道路の借金を国が返済し高速道路無料化を実現すること。
 そこを起点として、東京一極集中の経済構造を変えること。
 これが実行できなければ日本経済の衰退は止まらなくなるでしょう。

 道路に関心が向いた今年が、ラストチャンスに思えてなりません。
 一人でも多くの方に知ってもらいたい。そんな思いをこめて、再び道路問題に
 ついての本を出版いたします。徹夜続きで何とか書き終えました。
 『道路問題を解く』(ダイヤモンド社)という本です。
 手に取っていただければ幸いです。


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┃新しい本が発売になりました。
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 新しい本が発売になりました。
 『道路問題を解く−ガソリン税、道路財源、高速道路の答え』
  ダイヤモンド社 定価1,575円(税込み)
  http://g.ab0.jp/g.php/9FWJr0R3bYe51gwUeU

 この道路問題から見えてくるのは、日本全体の病んだ姿です。
 道路問題を解くことは、日本を立て直すことに通じます。
 終戦直後に作られた道路の仕組みを改めて、日本をもう一度元気にしましょ
 う。それが出来るのは今しかないのです。

 この本が、今の日本が抱える問題について皆様が考える際のヒントになれば
 幸いです。また、ご意見・ご感想をお寄せいただければと思います。


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┃その他メディアでも取り上げていただいています
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 ☆週刊ダイヤモンド 2008年3月22日号
 「高速道路の無料開放が日本経済を活性化する」

 アルファブロガー小飼弾さんのブログで、上記ダイヤモンドの記事と拙著を
 取り上げていただいています。
  http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51018903.html

 ☆TBSラジオ「生島ヒロシのおはよう一直線」
  3月20日(木)朝6時15分ぐらいから


 ●次号は来週にお届けいたします。どうぞお楽しみに!
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