朝晩が冷え込むようになり、秋本番ですね。『山崎通信』第14号をお届けいた
します。

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____山__崎__通__信____________2004.10.18_第14号
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┃秋の夜長、今の株式市場をみて思うこと
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 株式市場が動き出しました。原油高の中にも、そんな鼓動を感じる10月入り
 です。

 あらゆる意味でかつての対極にある日本。象徴的に現れているのが今の株式
 市場です。バブルのころ、世界一高かった日本株。
 もっとも、「株が高い」という言葉には注釈が要ります。単純に200円は、
 100円より高い、という話ではありません。それでは、外国の株式市場とは
 比べられません。国際比較や日本の過去との比較によく使われるのは、株価
 の比較ではなく、株価の「割安度・割高度」の比較です。この場合、企業や
 経済のファンダメンタルズに比べて高いあるいは安いというのが一般的です。
 ファンダメンタルズとは基礎的条件のこと。基礎的条件とは?収益や純資産
 のこと。
 それではインフレは、金利は、為替は関係ないのか?・・・あります。
 財政赤字は?・・・あります。
 世の中のほとんどのことと関係あります・・・。

 でも、我々は神ではありません。すべてのファンダメンタルズと株の関係を
 説明することはできません。だから思い切って切り捨てて、株価と1株あた
 りの利益の比較を表すのが株価収益率PER(Price Earnings Ratio)、
 1株あたりの純資産(<総資産>−<債務>)と比べるのが株価純資産倍率
 PBR(Price Book Value Ratio)という指標です。

 これを外国と、あるいは日本の過去と比べてみましょう、というのが、ここ
 での株が高いとか安いという話。
 この二つの指標はなかなかパワフルです。バブルの1980年代末。
 日本のPERは軽く50倍を超えていました。これからもっと儲かるぞという
 期待です。
 PBRも3倍以上。土地をはじめとした資産の価値も上がるぞ、という市場
 の期待が込められていました。それでいて金利も6%以上だったのです。
 そのころアメリカ株のPERは10倍ちょっと、PBRも1倍そこそこ。つま
 りアメリカ株は、利益の10倍で純資産程度にしか買われていなかったのです。
 つまり経営による付加価値はゼロと見られていた・・・。

 今はどうでしょう。日本のPERは19倍。かつての約3分の1。PBRは1.7
 倍です。これに対してアメリカのPERは17倍。PBRにいたっては3倍に
 跳ね上がって完全に日本を逆転しました。
 過去の日本と比べても、いまのアメリカと比べてもずいぶん「安く」なった
 ものです。

 逆に言えば、日本のファンダメンタルズは今「高い」のです。企業の利益は
 バブル時代を超え史上最高を更新しています。しかも、株のライバルである
 金利は依然としてゼロに近い。理論的にも人気が出そうなものですが、現実
 には日本株は一番割安です。

 なぜでしょうか。正確には誰にも分かりません。株を売買するすべての人の
 考えを集約することは不可能だからです。ただ、株式市場は、日本企業の
 利益は今後下がる、資産も下がる、と見ています。その見方は間違っている、
 というのは簡単です。しかし、バブルの頂点で日本経済に警告を最初に発し
 たのは株式市場でした。まだ経済が絶好調だった1990年の正月からわずか1
 年半で半分にまで暴落しました。それからさまざまな景気対策や改革が叫ば
 れましたが、結局失われた15年でした。

 あえて言いましょう。株式市場がいま見ているのは、この国の財政破綻です。
 それが、高齢化の急速な進展と中国の台頭と重なるときに、企業への一層の
 負担、高コスト、高金利、資産下落となって現れます。そこで双子の赤字
 が見えてきます。
 平たく言えば、1970年代末から1980年代初めにアメリカが“双子の赤字”に
 なり、国債市場が崩壊したときに似ています。いま、日本には金利上昇への
 備えはありません。海外からの資金導入の仕組みもありません。

 もっと根本的な問題があります。アメリカは“双子の赤字”の危機を、交通、
 金融、ITの大幅な規制緩和と値下げによって乗り切りました。大企業がマン
 ハッタンからほとんど出て行って、地方に立地し、経済の地域分散を行って
 復活しました。
 しかし、小泉改革では東京一極集中から抜け出せません。高速道路無料化を
 実現せず、郵政民営化と称して国営銀行、国営生保を作るという「改革」
 には、本気でコストを低下させ、地方から日本を復活させる戦略性はあり
 ません。


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┃『週刊エコノミスト』(10月26日号)にて政府の「郵政民営化」を斬ります!
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 9月24日に発表された政府の「郵政民営化の基本方針」が、5年前に当時の
 小泉議員本人が著書『郵政民営化論』で唱えた、財政投融資の抜本改革に全く
 触れず、逆に国営金融機関の膨張に終わることを10月18日発売の『週刊エコ
 ノミスト』(10月26日号)で論ずる予定です。


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┃単行本『大逆転の時代』(祥伝社)を近々出版します!!
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 10月中に、『大逆転の時代』(祥伝社)という単行本を出版予定です。

 現在の日本が直面する、少子高齢化、年金、財政破綻、中国の台頭などの
 難しい状況を、新しい日本のビジネスモデルと個人の生き方に変えていくた
 めの大逆転の提案です。

 これまで、個々に論じていたことを結びつけ、さらに新しい視点も付け加え
 ました。ご期待下さい。


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┃『ビッグコミックビジネス』(小学館)に、
┃     「新・日本経済入門 大逆転時代サバイバル編」を連載中です!
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 また、こうしたテーマを分かりやすく説明しようと、ビッグコミックビジネ
 ス(小学館)において、「新・日本経済入門 大逆転時代サバイバル編」の
 監修を始めました。読者から大変好評のお葉書を沢山いただいています。


 いまが日本の分かれ道。
 皆様と一緒に、少しでもよい国を子供たちに残してあげたいのです。

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● 次号は2004年11月中旬にお届けいたします。どうぞお楽しみに!

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