新緑の美しいさわやかな季節になりました。ゴールデンウィークも終わり
ましたが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。
『山崎通信』第20号をお届けいたします。
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____山__崎__通__信____________2005.05.13_第20号
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┃プリウス・インサイドへの道
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ゼネラル・モーターズ(GM)とフォードの債券の格付けがジャンク
ボンド(投資不適格債)にまで引き下げられて、5月はじめのアメリカは、
GMショックに見舞われました。そして、GMショックは、アメリカの弱点
を浮き彫りにしました。
ローマ・クラブが、「成長の限界」という衝撃的なレポートを出したのは
1972年、オイルショックの直前でした。このままのペースで行けば、「地球
の生態系における資源消費と汚染排出が・・・21世紀には成長に終止符を
打つ。・・・技術や文化、制度などの根本的な革新が必要だ。」と訴え
ました。他の面では革新的なアメリカですが、このローマ・クラブの警告は
無視してきました。世界のリーダーとしての役割を果たすどころか、不完全な
京都議定書へのサインさえ拒み、資源がぶ飲み社会であることをやめません。
そして、21世紀に入って世界は、ローマ・クラブの警告以上に早く資源枯渇
への道を歩んでいます。
かつて最大の産油国だったアメリカは、いまや石油の最大の輸入国に転落
しました。石油確保のための強迫観念が、他国への攻撃にまで走らせて
います。グローバル時代の戦略パートナーともてはやしてきた中国が、世界
第二位の石油消費国になるにつれて、6年前には1バレル15ドル以下だった
石油価格は、50ドルにまで跳ね上がりました。中国だけでなく他のBRICs
諸国などのかつての途上国において、石油の消費が飛躍的に増えています。
ということは、石油価格には大きな上昇圧力がかかります。
世界の民生用の石油の半分は、自動車に使われています。最大の自動車社会
はもちろんアメリカであり、ビッグスリーが君臨してきました。しかし、
ローマ・クラブが警告を発した70年代の初めから日本車が着実にシェアを
伸ばし、今では30%を超えています。日本車の強みは、昔も今も変わり
ません。良い車がアメリカ車より安いのです。そして燃費が良いのです。
ビッグスリーはこの流れを覆せませんでした。そこで、乗用車で日本車と
勝負する代わりに、燃費の悪いSUVやトラックに力をいれ、海外に進出し、
金融に力を入れました。しかしそうした策も、石油が50ドルの時代には
無力になってきました。GMショックは、成長の限界に対応できなかった
アメリカのギブアップ宣言に聞こえます。
一方、アメリカでは、トヨタ自動車のハイブリッド車プリウスに順番待ちが
できるほどの人気です。トヨタの奥田会長は、GMへのハイブリッド技術の
供与をいち早く提案しました。近来まれに見るビジネス・ステイツマン精神
に拍手したいと思います。ビッグスリーが破綻してしまえば、アメリカ社会
は巨大な衝撃を受けます。金融市場は混乱し、反日の機運がアメリカにまで
広がりかねません。それではトヨタだけでなく、多くの日本企業が市場を
失ってしまい、さらに周辺国との摩擦を抱えてしまったときには、日米同盟
関係の危機につながりかねません。
敵に塩を送るだけではありません。ビジネスとして考えても、奥田会長の
「プリウス・インサイド」の提案は理にかなっています。世界中の車に
プリウスのエンジンが載れば、パソコンの世界の「インテル・インサイド」
のようになるでしょう。開発コストを早く回収し、さらに燃費向上のため
に投資できる上に、基幹部品のエンジンを抑えてしまえば、ライバルである
世界の完成車メーカーに対して大きな優位に立てます。パソコンの世界で
起きたことと似た現象です。
しかも、世界の石油資源の消費を抑えるための最も建設的で現実的な対策
にもなりえます。急速に自動車社会に進む中国やインドでは、これから
アメリカ以上に石油の確保が深刻な問題になります。その焦りが中国に
強引な領土拡張行動を取らせているのではないでしょうか。それは今年に
なって噴出した反日行動にも影を落としています。「プリウス・インサイド」
の提案は、自動車産業のこれからの成長市場である途上国を抑えるだけ
でなく、途上国と地球全体の安定した成長のための、まさに「革新」となり
えます。それは、石油ショック以来地道にまじめに省エネ社会を築き上げ、
今では中国の5倍といわれる経済全体の石油効率を達成した日本が、世界
から「必要」と認識されるチャンスにもなりうるでしょう。必要とされる
ことは、アメリカ経済が弱体化し、むき出しの国家エゴがぶつかり合う
21世紀の世界で、日本が生き残るためにはとても大切です。
プリウスはそれだけの大役を背負っているのかもしれません。「環境国家
日本」を、社会全体で支えていく必要があるでしょう。
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● 次号は2005年6月中旬にお届けいたします。どうぞお楽しみに!
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