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____山__崎__通__信_______________2007.3.2_
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 関係者 様

 号外をお送りいたします。

 お知り合いの方にも、このメールを転送いただければ幸いです。

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┃はじめてのチャイナ・クラッシュ
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 上海の中国株が大きく下がって、アメリカの株が9・11テロ以来の大きな
 値下がりをしました。それが日本株などの大きな下げを呼びました。
 世界が初めて体験した「チャイナ・クラッシュ」でした。そして、
 「米中経済同盟」を中心とする21世紀が20世紀とは違うルールで動くこと
 の兆候でした。
 
 1月の山崎通信では、2007年初めが1997年初に似ていることを説明しました。
 日本では景気回復と株価上昇によって強気の見通しが支配しています。
 増税と財政再建が語られます。アジアの成長が続きます。10年前は民間の
 不良債権問題が、現在は自治体と地方の危機が終わっていません。1997年
 にはアジア通貨危機が起き、日本では金融機関の破たんが相次ぎ、長い
 トンネルに入りました。

 しかし、10年前と今では大きな違いがあります。

 10年前のアジア通貨危機の主役は東南アジア諸国や香港でした。アジア
 通貨危機は、外国投資家が短期の貸付を引き上げたのをきっかけに
 起きました。アジアの弱さが際立ちました。

 チャイナ・クラッシュの主役はもちろん中国です。チャイナ・クラッシュは、
 中国の国内投資家が一斉に売りを出したために起きました。上海とほぼ
 同じ時間帯に市場が開いていた日本ではあまり下がらなかったのに、
 ニューヨークが暴落したのです。特に中国に大きく投資しているアメリカの
 金融機関やメーカー、ハイテク企業の下げが目立ちました。アメリカの下げ
 が翌日の日本などに伝わって連鎖反応が起きたのです。

 今回のチャイナ・クラッシュは、日本以上にアメリカが、中国と相互依存の
 経済関係を築いてしまったことの最初の証明でもあり、中国の強さの証明
 でもありました。積もりに積もった不良債権問題を有り余る外貨準備など
 で消してしまった中国経済が、いよいよ内需型の成長を始め、その
 オーバーヒート現象が起きたのです。

 上海の下げのきっかけは、中国政府が株の過熱を抑えようと新しい税金を
 導入すると伝えられたからでした。中国の政策が世界の市場を動かす
 ところにまできたのです。

 1989年6月に天安門事件が起き、中国社会が大混乱に陥り、世界が中国に
 経済制裁を課したとき、香港の株は今回をはるかに上回る大暴落をしました。
 ところが、アメリカでも日本でも株は上昇を続けました。そのころ中国が
 世界経済に与える影響は、今とは比較にならず小さかったのです。今、
 中国でもう一度天安門事件クラスの大混乱があれば、世界経済は今回とは
 比較にならない大打撃を受けるでしょう。本当のチャイナ・クラッシュです。
 
 中国の驚異の成長の最大のからくりは為替にあります。再三申し上げて
 いますが、中国に外貨がほとんどなかった天安門事件の1989年から世界
 最大の外貨準備を持つ国になった現在までで、人民元はドルに対して
 2分の1にまで安くなっています。日本が世界最大の外貨準備を持った
 あとは1ドル360円から80円を切るまでに5倍近くも円が高くなったのとは
 まったく逆です。

 1992年以来、自然に出来上がった米中経済同盟ともいうべき関係によって、
 中国にアメリカ企業が進出して製品を作り、中国からアメリカや世界へ
 輸出しています。安い人民元によって中国での労働と不動産のコストは
 アメリカをはるかに下回りますから、アメリカ企業全体での収益は
 飛躍的に向上します。コストが安いから製品の値段は上がりません。
 だから、石油や砂糖の値段が上がっても世界にインフレが起きないのです。
 そうなると金利も安いから、企業は儲かります。一方、中国には給料や
 土地代や投資資金の形でアメリカからどんどんお金が入り、それが
 外貨準備や消費に回り、中国の国内経済が高度成長をとげます。

 安い人民元は、中国風にいうと、米中双方の利益になるわけです。
 もちろん、日本や韓国やEUなどから中国に進出した企業にとっても、
 安い人民元は利益になるわけです。

 そうなると同じ1ドルのGDPを稼ぐのに日本の6倍も石油を使う中国の成長が
 止まらなくなり、資源の枯渇と深刻な地球温暖化の問題や、産油国への
 富の移転や、好ましからざる軍備増強も起きるのです。

 そして、アメリカでも中国でも、必然的に国民の間の格差が増大し、
 不満のマグマが高まっています。とりわけ中国での暴発の危険は高いと
 思われます。仮に暴発すれば世界への影響ははかりしれないものになる
 はずです。

 こうしてみれば、中国発の為替、金融、財政、資源、環境、安全保障、
 格差の問題が、世界的につながっていることは明白です。その最大の
 要因が、米中経済同盟からはじまった21世紀の世界の構造にあります。

 ところが、世界は驚くほど無防備です。それぞれの問題はバラバラにしか
 考えられていません。人民元の問題を主要国が話し合う場もないのです。
 世界最大の外貨準備を持つ国を入れないG7やサミットが世界経済に
 ついて語れるのでしょうか。世界第2位の石油消費国に環境対策の義務
 がない京都議定書に効力があるのでしょうか。もっとも、最大の消費国も
 京都議定書に批准すらしないのです。もっと緊急の環境対策が求められて
 いる時代に、なんと悠長なことでしょう。

 かつて円高に苦しんだ日本などは、人民元の問題に事実上発言権がありま
 せん。安い人民元が、高い石油価格を生み、環境や安全保障はもちろん、
 日本の格差や安全保障の問題にまで及んでいるのです。台頭する中国への
 国際社会の制御装置は未熟そのものであり、中国自身にとっても巨大な
 リスクになっています。

 世界はまだ、中国という新しい主要プレーヤーの存在に向き合っていま
 せん。本当に平和的共存を目指すならば、世界の枠組みを新しく作り、
 その中で中国に行動してもらうべきでしょう。

 それとも先進諸国は、かつてのナチスやソ連に対したように、中国に
 敵対し打倒を目指すのでしょうか。そうでないとすれば、新しいルールを
 作るべきです。

 日本が新しいルール作りのリーダーたらんことを。そして、日本の国も
 新しい世界の環境に適応せんことを。それは国土の利用にも及ぶはずです。

 2005年に「チャイナ・クラッシュ」を書きました。今回は、もっと踏み
 こんで、世界の構造と日本のことについてまでタテとヨコから書いて
 みました。拙著「米中経済同盟を知らない日本人」です。
 皆様のご批判をいただきたく存じます。


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 以下のアドレスで前述の本をお買い求めいただけます。

 「チャイナ・クラッシュ」
  http://g.ab0.jp/g.php/8rqtV04jtuiI1gwUeU

 「米中経済同盟を知らない日本人」
  http://g.ab0.jp/g.php/8rqtV04jtuiI2uwUef


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