━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
____山__崎__通__信_______________2004.11.2_
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 号外をお送りいたします。

 お知り合いの方にも、このメールを転送いただければ幸いです。


 ___________
 プロ野球と大逆転の時代
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 本日11月2日は、アメリカの大統領選挙もありますが、日本の地方にとって
 も重要です。プロ野球の新規参入問題が決定される日だからです。

 なにをバカな、平和ボケ、と叱られそうです。
 宮城県の浅野知事に、とある会合でお目にかかりました。傑物という言葉が
 ぴったりの方です。地方から日本を動かすという気概において、現代の伊達
 政宗といいましょうか。仙台という地の利、そして浅野知事という人を得て
 縮小に向かうはずだったプロ野球が、いまや地域おこしの核になろうとして
 います。

 もしプロ野球が仙台に来たら直接の経済効果だけでも120億円、PR効果、
 一般の企業誘致などの効果はその何倍にもなるといいます。東京ドームから
 札幌ドームに移って大人気の日本ハムの前例もあります。Tシャツの堀江さ
 んのアイデアが大きなものに広がってきました。宮城県にとっては戦後最大
 のイベントになろうとしています。
 でも、11月2日に誰が何を決めるのか、ふと考えると根本的に何か間違って
 いる気がするのです。それは、プロ野球は誰のもの?という疑問です。
 今の日本では、プロ野球はオーナーのものです。だから「選手ごとき」と
 いう発言が出るのです。でもそうおっしゃった方は、親会社の本当のオー
 ナー(日本語では「所有者」)なのですか。
 確かサラリーマンなのでは・・・。

 ステークホールダーという言葉があります。

 直訳すれば、利害関係人でしょうか。企業の社会的責任(CSR)が日本
 でも重視される中で認識されるようになりました。企業のステークホールダー
 は、顧客・消費者、社会(地域・国・世界)、従業員、経営者、銀行・債券
 投資家、そして株主などが挙げられます。最大の法的権限を持つのは株主
 です。企業のオーナーは株主だからです。

 しかし、株主に利益をもたらすには、企業が、様々なステークホールダー
 に報いる経営を行わなくてはなりません。社会を欺いた企業が、このごろ
 は厳しく退場させられるのも、日本でもステークホールダー重視の考えが浸
 透してきたからといえるでしょう。とくに上場企業の場合は、取引所、金融
 当局という審判がいて、情報公開、罰則、上場廃止などの手段によってステ
 ークホールダーを尊重することになっています。

 それでは、日本のプロ野球のステークホールダーは誰でしょうか。奇妙な
 ことにオーナーしかいません。オーナーは選手をステークホールダーとして
 認めたくありません。株主に相当する者は実はいません。そしてオーナーた
 ちが唯一のステークホールダーとして新規参入者の審査を行っています。
 ところが、3つの球団のオーナーがドラフト対象選手への賄賂提供で辞任し、
 一人のオーナーは史上最大の株式インサイダー取引を行い、そして一人の元
 球場運営会社社長はセクハラで逮捕されました。そして、ほとんどの親会社
 が本音では球団を手放したいと思っているのが透けて見えます。
 こうしたオーナーたちに果たして新規参入の審査を行う資格があるので
 しょうか。株式市場にたとえれば、取引所ではなく、上場廃止寸前の企業が
 集まって新規公開企業の上場審査をするようなものです。資本の世界から見
 たら異常です。

 問題なのは、球団の地元を代表する仕組みがないことです。本来は、コミッ
 ショナーが地元や社会を代弁するはずですが、ほとんど責任放棄しています。
 プロ野球にはまともなガバナンス(統治)が今にいたるまでないのです。
 本来、地元は最大のステークホールダーのはずです。仮に「仙台○○」と
 いう球団ができれば、球団は地域の代表になります。仙台市と宮城県に見ら
 れるように、プラス面では、経済効果・知名度アップ、何よりもプライドア
 ップとイメージアップ、ひいては企業や若者の地元定着などが考えられます。
 一方でコストがかかります。球場整備だけでなく交通網、警備体制から、
 ごみ処理まで税金が使われます。騒音や浮かれ騒ぎの被害もあるでしょう。

 しかし、私の知る限り、今回の審査はあくまでオーナーたちが業界のために
 決めるものであり、地元がそのプロセスに公式に参加し、球団誘致のリター
 ンとリスクをよく知った上で意見を公式に述べる、というものにはなってい
 ません。浅野知事によれば、宮城県民の80%はライブドアを支持し、楽天を
 支持するのは2%に過ぎないそうです。何も多数決で決める問題ではないで
 すが、このすさまじいギャップを埋めなければ不幸ではないでしょうか。
 「これで決めました、仙台さん、よろしく」ということなのでしょうか。

 これまで日本ではプロ野球は事業拡張、ひらたく言えば親会社の金儲けの手
 段と位置づけられてきました。それは今度の新規参入希望組にも濃厚な理由
 です。一方で、かのベースボール発祥の地アメリカでは、オーケストラと
 並んでプロ野球はオーナーになることが最高の名誉とされ、オーナーは地域
 最高の名士とされてきたと聞きます。球団経営はチャリティであり、持ち出
 しは当たり前でした。現在は、球団はフランチャイズ事業としてオーナーの
 事業からはますます独立して運営されているようです。当然地元の意向が尊
 重され、また、コミッショナーは、かのピーター・ユベロスのように、オー
 ナーたちの上に君臨してビジネス利害よりも地元・国民の声を重視してきた
 のです。なぜなら、野球はスポーツであると同時に偉大な文化であり、地域
 と国民の誇りだからです。そのアメリカで、イチローが大リーグ一の偉大な
 ヒッターになり、松井がヤンキースの四番になりました。
 日本の「たかが選手」は世界レベルです。ところが日本のプロ野球のガバナ
 ンスはマイナーリーグ以下です。これでは才能流出が続くはずです。

 さて、地方の時代とは、中央で決めたことを一方的に地方に押し付ける、
 そんな20世紀型の中央集権国家のあり方を地方の主権を中心にしたものに
 変えることではなかったでしょうか。いまプロ野球の新規参入問題が突きつ
 けているのは、まさにこの地方の主権の問題ではないでしょうか。
 多くの国民は、東京にしかチャンスがないプロ野球から、どの地域にもチ
 ャンスがある野球に変えたいのです。この国民の声を今くみ取ることなくし
 て、あとで国民が地方の主権に関心を持ってくれない、といったところでむ
 なしく響くでしょう。

 日本の改革を求めるなら、いま声を上げるべきでしょう。
 野球という第二の国技で、地域の声が反映され、また地域も自己責任を本当
 に取り、地域が参加して物事が決まる大成功例になったとき、全国のどこに
 でもチャンスがあるという、大逆転の時代の発火点になるでしょう。
 その時こそ、イチローや松井が誇りを持って日本に帰ってきてプレーする
 ようなすばらしい野球になると期待します。

◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃拙著『大逆転の時代〜日本復活の最終処方箋』(祥伝社)発売中です。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 『大逆転の時代〜日本復活の最終処方箋』が10月25日祥伝社より発売され
 ました。
 読んでいただければ幸いです。


 ………………………………………………………………………………………
 ★メールアドレスの変更をご希望の方、またメールをご不要な方は、
  下記URLよりお手続きをお願いいたします。
 ◇メールアドレス変更 : http://www.yamazaki-online.jp/change.html
 ◇メールマガジン解除 : http://www.yamazaki-online.jp/stop.html

 ★また『山崎オンライン』上でも、随時、変更・停止手続き可能です。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
──●          山崎オンライン事務局
─■⌒■───────────────────────────────
      http://www.yamazaki-online.jp/
      E-mail: yyonline@yyoffice.co.jp

○出所の明記をする限り、転送・転載は自由です(ご連絡頂ければ幸いです)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━