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____山__崎__通__信_______________2007.4.26_
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関係者様
号外をお送りいたします。
お知り合いの方にも、このメールを転送いただければ幸いです。
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┃ここに中国があるのに
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中国の温家宝首相が来日しました。氷が溶けるという表現で、日中の和解
を提案し、戦後の日本が国際社会と中国の発展に貢献したことを明言しま
した。さらに、中国が抱える資源や環境や社会格差の問題を認めたうえで、
平和国家で環境先進国である日本の助力を求めました。つい2年前に、
中国政府が日本の国連の安全保障理事会の常任理事国就任を全力で阻止
したことを思えば大きな様変わりでした。そして、温家宝首相の日本の
国会での演説を中国でもそのまま放送し、中国国内にも同じメッセージを
届けました。それは、中国政府にとっての対日関係の取り扱いの難しさを
も浮き彫りにしました。
薄氷を踏む思いだったのは、安倍政権も同じでしょう。さまざまな意見も
ありましょうが、中国と共存することが日本の国益である以上、去年の
政権誕生直後に北京を訪問した安倍首相のリーダーシップを再度感じ
させる外交成果でした。
温家宝訪日のタイミングで提案されたのが、羽田と上海の間のシャトル便
の運航です。経済面だけ見れば当然のことです。日本が対中ビジネスで
欧米と競争するときに、最大のメリットは日中が隣同士であることです。
それなのに、これまでは東京都心から時間がかかる成田まで行って、
そこから上海に行っていたわけです。これでは、上海出張も二泊三日は
かかります。本来の国家戦略は、中国との日帰り圏である福岡あたりを
アジア経済圏として整備してシャトルを飛ばし、隣同士のメリットを
フル活用すべきなのですが、次善の策として、首都圏の中では羽田から
飛ばすのは理解できます。
いずれにせよ、都心に近い羽田に首都圏のビジネス需要が移るのは趨勢に
ならざるをえません。ところが、そうなると日本の国土の歪みもまた
明らかになります。羽田に一番近く、地価が銀座の1,000分の1以下の
広大な土地がいまだに使われることもなく放置されているのです。
それが木更津です。
先週も木更津に行ってきました。羽田空港から20分あまりで、木更津金田
のインターに着きます。水田と埋立地が広がります。そのあたりの地価は
坪5万円程度です。ホテルでもオフィスでもショッピングセンターでも
住宅でも病院でも、ウォーターフロントに素敵な開発がとても低いコスト
でできそうです。コストでもっとも有利な副都心ができるでしょう。
ところが、これだけ東京の都心の地価が上がり、六本木ヒルズ・東京
ミッドタウンと開発が進んでも、木更津には関係ありません。
羽田と木更津を結ぶのは、東京湾アクアラインです。高速道路無料化が
叫ばれて以来、かつて片道4,000円だった料金は3,000円(ETCを使えば
2,320円)まで下がりました。それでも15キロのアクアラインの往復に
5,000円以上も払おうという奇特な車はほとんどありません。料金が高い
わけは、アクアラインの建設費を借金でまかなってきたからです。借金を
返せないから誰も利用できない高い料金を取り続け、経済効果どころか
値下がりした土地を抱えて木更津経済は四苦八苦しています。アクア
ラインが高くて使えないから、仕方なしに、東京を通過するだけの
トラックが都心を走り、結果として排気ガスと交通事故と渋滞を運ぶ
悪者にされています。
一方、かつて京浜工業地帯に工場を構えた大企業は、工場を次々に
地価が安い中国各地に移し、中国経済の中心の上海にオフィスを構えて
います。それなのに、羽田から20分で行ける木更津は上海よりも安い
地価で放置されています。ここに日本語が通じる中国があるのに!
なんとチグハグなことでしょう。小泉首相の置き土産の一つは、道路
財源の一般財源化でした。道路に使うお金が余っているから他の目的
に使え、というのです。その使い道は、高速道路やアクアラインの
借金の返済が真っ先に来るのが筋でしょう。
特に問題なのはガソリン税です。本来の税率の倍の暫定税率をとり
続けているおかげで、日本のガソリンは税金が約4割にもなります。
そもそも、ガソリンという特定の品目に消費税以上に高い税金を取る
大義名分が道路整備でした。道路整備に使わずに、銀行の損や年金の
穴埋めにでも使うのであれば、自動車ユーザーだけに重税を課す根拠は
希薄です。ガソリン税を維持しようとするなら、道路整備の後始末
である高速道路やアクアラインの借金の返済にまず回せばいいではない
ですか。新しい道路の建設に回す必要はありません。今年度でガソリン
税の暫定税率が切れます。政府がいまの税率を維持したいなら、高速
道路の借金の返済に使うのが筋でしょう。そうなれば、アクアライン
の料金をタダにもできるのです。
借金の返済方法は、債務承継という民間のファイナンスでは当たり前の
手法を使えば簡単です。日本で一番低コストの資金調達ができる日本国
政府がいったん国債を発行して、子会社であるかつての道路公団の借金
を返済します。この時点で高速道路やアクアラインの債務がなくなり
料金を取る根拠がなくなり無料化されます。そして、余った道路財源で
この国債を返済します。
この方法なら、いまの10年国債などで1.6%程度の金利で返済できます。
ところが、現実に起きていることは、独立行政法人である日本高速
道路保有・債務返済機構なるところが、40年もの債券を2.75%もの
金利でまた借金を起こすことを決めました。連結した国のバランス
シートは膨張します。しかも、40年間の金利の合計が110%にもなる
わけです。この金利が高速料金にこれから上乗せされるのです。
小泉さんが残した言葉が「モッタイナイ」でした。余った自動車
ユーザーへの税金を高速道路の借金返済に使わずに、わざわざ40年
もの高い金利で独立行政法人が新しく借金して高速道路を作る。
せっかく作ったアクアラインを使えないままにする。羽田の対岸の
木更津の広大な土地を放置したままで中国に出て行く。全国の高速道路
を無料にして、物流と人流のコストを下げ、地方経済を活性化する
チャンスを逃す。モッタイナイ話です。
アメリカ中心経済ゆえに東京一極集中が必然だった20世紀から、中国・
インドと続く多極型の国際関係に21世紀の日本を取り巻く環境が
変わっています。そうなれば、日本自身も変わり、東京以外の国土に
チャンスがある経済にする必要があります。
明治半ばに国勢調査が始まったとき、日本で一番人口が多かったのは
新潟県でした。米作り国家だったからです。しかし、戦後1950年から
今日まで首都圏の人口は2,000万人も増えました。アメリカ輸出中心の
東京一極集中が、戦後の強力なビジネスモデルでした。新しい世界に
適合したことが日本の繁栄をもたらしました。しかし、21世紀のいま、
中国・インドという低コストの新興経済が巨大になるときには、日本
には経済多極化と低コスト化が求められます。21世紀の新しい世界に
適合した国土への変化を拒否している最大の象徴が、アクアラインの
ばかげた料金です。羽田と目と鼻の先の木更津ですら発展の芽をつぶ
されて、どうして都市間の競争や地方の時代や道州制の時代が来るので
しょうか。どうやって、環境や自然を生かしたサービス業や地方からの
新しい世界企業が生まれるでしょうか。
改革いまだならず、その思いを深くして木更津を後にしました。
詳しい議論は「米中経済同盟を知らない日本人」(徳間書店刊)を
お読みいただければ幸いです。
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┃新刊発売のお知らせ
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新しく本が発売になりました。皆様のご批判をいただければ幸いです。
「米中経済同盟を知らない日本人」 徳間書店 定価1,680円(税込み)
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