関係者様

山崎通信号外をお届けいたします。

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____山__崎__通__信_______________2007.11.30_
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┃ワイドショー型複合不況で沈む日本経済
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《テレビが業界の息の根を止め消費者を排除する》
 2007年の日本経済は、残念ながら新しいタイプの不況に入り込んだようです。
 ワイドショー型複合不況とも言えるでしょう。不祥事、報道、国会追及、
 ワイドショー、謝罪、糾弾、法律やルールの改正、極端な業界の落ち込み、
 そして日本経済の落ち込み、というプロセスが蔓延しています。

 ところが、日銀の金融政策も政府の経済政策も、景気は上向きというコメン
 トを繰り返すばかりで、これまでこうしたミクロの落ち込みがマクロに及ぼす
 影響をトータルに捉えてきませんでした。

 いまや、日本経済は急速に下降線をたどりだしています。景気が悪化して
 いることを認めて、有効な手を打たなければ、日本経済の衰退は加速し、
 多くの国民の暮らしも人生設計も大きなマイナスの影響を受けるでしょう。

《法律改正で住宅着工件数に急ブレーキ》
 まず、住宅です。今年のアメリカはサブプライムローン問題で大揺れです。
 住宅着工件数が大幅に低下しました。ところが、日本でも住宅の建設に
 急ブレーキがかかっています。月次の新設着工件数が去年の半分近くにまで
 低下しています。去年大きな問題になった耐震偽装問題で、建築基準法が
 改正され、建築確認や検査が厳格化され、罰則が強化されました。

 途中での設計変更も原則許されなくなりました。工場生産型の大手のハウス
 メーカーは対応できても、施主と相談しながら作るような工務店や伝統工法
 での建築は難しくなりました。中小の建設会社や関連の左官屋さんなどの
 倒産や廃業が相次いでいます。

《消費者や中小企業といった、弱い借り手にお金が回らない》
 弱い立場の借り手にお金が回らなくなった点でも、日本はアメリカに似てい
 ます。消費者ローンや商工ローンの高金利を下げるための貸金業法の改正
 が、国内の金融活動を縮小させています。高い金利の消費者ローンや商工
 ローンが個人の破綻や自殺を助長しているという批判がありました。

 そして、最高裁の決定によって、出資法で認められていた29.2%の上限金利
 については、利息制限法というもう1つの法律が規定する上限金利(貸付額
 により年15〜20%)を上回った部分(いわゆる「グレーゾーン金利」)が、
 明確に無効とされたのです。

 大手の消費者金融会社は巨額の損失を計上しました。全国で貸金業者の
 廃業が相次ぎました。貸金業者の資金調達も難しくなり、当然ながら消費者
 や中小企業へのローンも減りました。資金繰りが厳しくなって倒産する中小
 企業が増えています。

 インチキな金融商品や強引な勧誘の被害を防ぎ、包括的に一般投資家を守る
 ために、と金融商品取引法ができ、今年施行されました。延々とリスクの説明
 が続くだけでなく、70歳以上の人には商品の販売を制限するなどということ
 が末端では行われているようです。

 右肩上がりで増えてきた投資信託などの売れ行きが目に見えて鈍化し、
 とりわけ海外への投資が大きくブレーキをかけられて、円高傾向の圧力に
 なって、それがまた株式市場の下げ要因になっていることが観察されます。

《世論の批判で撤退したり破綻したりする場合も》
 法律の改正ではなく、コンプライアンスの強化や世論の批判による撤退や破綻
 も相次いでいます。

 英会話教室で最大手のNOVAは、法令違反の契約への処分がきっかけになって
 あえなく倒産し、40万人の生徒の権利は宙に浮きました。介護の分野で最大の
 企業であったコムスンは、介護報酬の過大請求などの違反行為から全面的な
 撤退に追い込まれました。

 食の分野での問題もやむ気配がありません。かつては狂牛病の疑いのある
 原料の混入でハムや食肉のメーカーが疑われ、雪印や不二家の期限切れ材料
 の使用や細菌検出の問題が暴露されました。今年になると、白い恋人、ミート
 ホープ、比内鶏、赤福、船場吉兆、と日本列島縦断の不祥事の続発です。
 地方の有力企業の売り上げが落ち込み、観光地の評判が下がっています。

《消費者ニーズに応えるより、ミスをなくすことに経営の重点が移る》
 問題になった業界や企業には、一定のパターンがあるようです。まずは身から
 出たサビです。

 消費者の信頼を裏切って組織的にウソをついたことがばれます。あるいは
 社会常識に反した企業行動が明らかに出ます。そして、国会や内部告発に
 よって、ウソや偽装が蔓延している実態が取り上げられます。新聞や雑誌が
 書きます。ネットに出ます。それがテレビのワイドショーに取り上げられると、
 一気に世論の集中砲火を浴びます。

 ことに、お茶の間の正義の味方である有名司会者やキャスターが、この会社、
 この業界は許せない、と言うと大変です。経営者は誰だ、どんな奴だ、という
 ことになり私生活まで含めた攻撃が始まります。ついこの間まで、小泉改革、
 市場原理、官から民、を支持したテレビが、今度は金儲けそのものを批判し
 ます。

 官僚や政治家も世論には敏感ですから、業界の体質を改め、事態が再発しな
 いようにと厳重な規制を導入し、法律を変えます。規則を守るためのチェック
 体制も今までより分厚くすることが要求されます。その結果、多数のお客の
 ニーズに応えることよりも、ミスをなくすことに経営の重点が置かれます。

 経営資源は有限であり、競争があるわけですから、規模や資金力が見劣り
 する会社は大手の会社に比べて不利な立場に立たされ淘汰されていきます。
 それぞれの業界では、新しい規制で大幅に売り上げが落ち込むことが分かっ
 ていても、世論に抗するすべがありません。サービスを提供する会社がなく
 なって消費者が初めて不便を実感しても遅いのです。

《打撃を被ったのは、ポスト工業化時代の産業ばかり》
 かなり単純化すると、こんな構図ができつつあるのかもしれません。これは
 仮説ですから今後の検証が必要です。以上のような事態を、木村剛さんは
 コンプライアンス不況と呼びます。私は、その性格からワイドショー型複合
 不況と名づけるのがいいのかな、と思います。

 法律や規則は建前、守るのはバカだと思ってきた会社や業界、業界と持ちつ
 持たれつだった行政や政治、お上が守ってくれるものと信じミスを許さない
 消費者。それぞれが、原因を作ってきました。三すくみになっていますから、
 ほぐしていくのは大変でしょう。

 テレビ自体が捏造と偽装を行い、虚偽の報道をしてきたことも明らかになり
 ました。ところがテレビだけは不問に付されます。そうして、正義の味方の
 テレビに後押しされて、思いっきり厳しい法律やルールができ業界の息の根
 が止まっても、切実に利用したい消費者が排除されても、今度は誰も責任は
 取らないのです。

 こうして、住宅・建設、消費者ローン、商工ローン、金融、教育、介護、
 食品・観光、といった業界が打撃を被りました。その多くは、製造業が
 アジアに出て行った後のサービス産業に成長の活路を見いだすべき、
 ポスト工業化時代の日本を支えるべき産業です。

 でも、当然ながら、消費者を裏切った会社に向けられる視線は冷ややかです。
 ベンチャーの旗手や老舗でも、今は一罰百戒、つぶれて当たり前、と思われ
 がちです。

《ワイドショーが国民や政治家の判断材料に》
 解決策はとても難しいものでしょう。役所や政治家が業界や消費者のことを
 よく分かっていなくては、現実的な政策は出せません。徹底的にクリーンで
 かつ業界に通じることは簡単ではないでしょう。

 国民も、ワイドショーだけ見て物事を判断するようなことはやめて、事実を
 きちんと見て判断すべきでしょうが、現実には活字離れや思考離れが進ん
 でいます。役人や政治家だって聖人君子ではありません。国民が顧みない
 報われない地道な作業は敬遠するでしょう。

 ワイドショーは視聴率との戦いですから、単純化しドラマ化しないと見て
 もらえません。そう考えれば、ワイドショーも社会問題を告発し国民の社会
 への関心をつなぎ留める役割は果たしているわけです。

《日本経済の下振れリスクは確実に高まっている》
 確実に言えることは、ただでさえひ弱な構造の日本経済全体が下振れする
 リスクが高まっていることです。1980年代までの元気な日本経済であれば、
 業界ごとの打撃を吸収することも容易だったでしょう。でも今の日本の国内
 経済は、多くの部分が縮小過程に入っています。

 上場企業の史上最高の決算が続いているといっても、そのほとんどが海外で
 の伸びによるものです。人口は減りだしました。多くの地方の経済はマイナス
 成長が続きます。自治体の財政状態も、赤字が膨らんでいます。

 かつてのように、輸出企業の稼いだ富を財政の装置を使ってばら撒けば
 国内経済が成長できた時代は終わりました。かといって、生活サービスや
 研究開発などで付加価値の高い産業が地方に育っているわけでもありません。
 東京一極集中の国土の構造は変わっていません。

 そして、アメリカのサブプライムローン問題から始まった世界的な金融の
 収縮現象も、日本の金融機関に影響を与えだしました。金融緩和などに
 よる景気刺激策が切実に必要なのは日本も同じです。不況に突入してから
 対策を始めても手遅れになるでしょう。


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┃TBSラジオ「アクセス」に出演し、高速道路無料化について語ります
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 12月3日(月)、午後10時40分頃〜11時40分

 TBSラジオ「アクセス」に出演し、田中康夫さんと「高速道路無料化」という
 テーマで語りあう予定です。
  http://tbs954.jp/ac/

 生放送です。ご期待下さい。


 ●次号は来週お届けいたします。どうぞお楽しみに!
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