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____山__崎__通__信_______________2005.02.25_
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 号外をお送りいたします。

 お知り合いの方にも、このメールを転送いただければ幸いです。


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┃ホリエモンとエビジョンイル、メディアとプロ野球
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 ニッポン放送の支配権をめぐるライブドアとフジテレビの戦いが真っ盛り。
 支配をめぐる戦いがけしからんというのであれば、会社法の株式の定義を
 書き直し、株主には会社の支配権がない、とすべきでしょう。あるいは、
 普通株式を法律で禁止し、議決権のない優先株か債券、あるいは借り入れ
 でしか資金調達できないとでも変えたらどうでしょうか。
 ましてニッポン放送もフジテレビも上場企業なのだから、堀江さんが株主で
 あってはいけないという株主間の差別を経営者が主張するならば、取引所
 および監督当局が重大な関心を持って事情聴取すべきことでしょう。

 ただ一方で、転換価格がどんどん下がっていくようなライブドアの転換社債
 の発行や貸株が、ライブドアの既存株主の権利を侵害していないのか、取締
 役会が本当に株主の権利を代表したうえで発行を認めたのかという、取締役
 の受託者責任は問われるべきでしょう。ただし、転換価格が発行時の株価を
 下回るような転換社債は、90年代に不良債権問題で株式での資金調達が困難
 になった銀行が始めたことです。なにもライブドアだけではありません。
 それに堀江さんは最大の既存株主だから、痛いのは本人です。いわば
 「崖っぷち」ファイナンスというべきでしょうか。

 ここまでは、所詮お金の話です。勝つほうが支配すればいいのです。また
 儲かる経営者を決めればいいのです。堀江さん以外にも挑戦者は
 続くでしょう。国民は観客です。

 でも、メディアはお金だけではすまない事柄です。放送は国民のものです。
 というと、「なにそれ?」と聞かれそうです。テレビ・ラジオは電波を
 特権的に利用する権利を国から与えられています。特権を与えられる
 代わりに責任があります。国民の知る権利を守り、国民に知らせる義務です。
 これを規定する法律が、昭和25年にできた放送法です。戦前のメディアは、
 大本営発表のように事実とかけ離れたことを伝えたり、大事なことを
 伝えなかったりすることによって国を誤った方向に導きました。二度とそんな
 ことがおきないように、放送法は「放送の不偏不党、真実及び自律を保障
 することによって、放送による表現の自由を確保すること」を定め、
 「政治的に公平」であることを求めています。

 今回の騒動のなかでは、こうしたメディアの独立性、公平性などが議論
 されることはありません。堀江さんの考えも私には分かりません。
 政治家がいっせいに、「堀江はけしからん。」という声を上げました。大臣
 も上げたので、これが政府の意見なのでしょう。してみるとその根拠は、
 堀江さんはメディアと表現の自由の観点から見て好ましからぬ人物という
 ことでしょうか。

 NHKの会長が退任しました。長らく特定政党の特定派閥の実質メンバーと
 呼ばれるほどに政治に密着してきたそうです。そんな報道がされるほどの
 人物がトップを務めていたことについて、公共放送たるNHKからの説明は
 いまだになされていません。考えてみれば驚くべきことです。不偏不党、
 政治的に公平、の原則をもっとも厳格に適用すべきNHKが、特定の政治勢力の
 利害に近い人物によって運営されていたのです。どう見ても放送法に照らし
 て疑義のあるこんな人事を放置しておきながら、政治家がホリエモン攻撃を
 続けるとしたら片腹痛いとしかいえません。

 ワールドカップ・サッカーの審判が対戦国のチームの作戦会議にいつも出て
 いたら、ファンならずとも怒るでしょう。サッカーでは当たり前でも、
 メディアでは審判は中立にできないのでしょうか。それとも日本の政治家の
 本音は、日本のメディアもあの首領様の国と同じように自分に都合のいい
 ことだけを流してくれるといいな、ということでしょうか。
 そういえばNHK会長のニックネームは「エビジョンイル」という失礼なもの
 でした。

 それにしても、ホリエモンは21世紀日本最大のお騒がせ人間です。昨年の
 プロ野球騒動に引き続き最高の話題を提供してくれます。そして日本のプロ
 野球とメディアが同じような問題を抱えていることが明らかになって
 きました。
 プロ野球においても、堀江さんは経営者として「いかがなものか」と既存
 球団のオーナーたちから判定されました。ところが、そのオーナーたちの
 多くがプロ野球の経営者にはふさわしくないことが発覚しました。大学生
 への裏金工作で複数のオーナーが辞任しました。あるオーナーは、セクハラで
 逮捕されました。また、あるオーナーは戦後最大のインサイダー取引と証取
 法違反事件の当事者でした。二つのメディア企業は、放送法の規制回避の
 ための株式の名義貸しを行っていました。さらに、あるスポンサー企業は
 BSE疑惑での国からの詐取事件を起こしています。こうしたオーナーたちが
 はたして新規参入者を審査できるのか、という問題がいやでも明るみに
 出ました。

 いま、メディアの分野においても堀江さんは「不適格者」という集中攻撃を
 浴びています。確かに堀江さんが報道機関の経営者としてどこまで適格なのか
 はわかりにくいです。しかし、放送法にうたわれたメディアの政治的な中立
 と不偏不党という大原則から見て不適格であった可能性が濃厚であったのは、
 特定の政治勢力と緊密な関係にあったNHK会長ではないでしょうか。そして、
 他のメディアのトップのなかにもそうした政治勢力との関係を誇示すらする
 人がいないでしょうか。こうした関係に対する説明はありません。はたして
 どちらが不適格なのでしょう。

 プロ野球は誰のものか、というテーマを突きつけたのも堀江さんでした。
 それまでの「プロ野球はオーナーのもの」という考え方に、「プロ野球は
 国民のもの、地域のもの」という本来あるべき姿を取り戻すきっかけを与えた
 のは堀江さんではないでしょうか。いまの仙台の盛り上がり、またその前の
 福岡や札幌の成功を見れば、野球は地域の誇りであり子供たちの夢という姿が
 はっきり見えてきました。

 放送メディアは国民のものです。国民に真実を伝え、政治的に公平であり
 「不偏不党」であることが厳密に要求されるはずです。それが放送法で決めら
 れています。本来、他の上場企業以上に厳しい説明責任と透明性がメディアの
 経営者には要求されます。それが電波を独占する特権を与えられる条件のはず
 です。それがこれまでないがしろにされてきたことを、堀江さんの行動は
 図らずも明らかにしつつあります。

 かつては、上場企業でもインサイダー取引や総会屋との付き合いも野放し
 でした。いまは法律が厳正に執行されるようになりました。そうでないと
 株式市場の公平性と透明性が守れないからです。そして、経営者には高い
 説明責任が求められています。いままで特権に守られてきたメディアにも、
 こうした当たり前の基準が当てはまる時期が来たのではないでしょうか。
 メディアが「公平中立な厳しい審判」であり、特定のチームに肩入れしない、
 という地位を確立することができなければ、受信料を国民に払わせたり、
 電波を独占する特権を国民の代表たる政府に与えられたりする根拠は
 なくなるでしょう。

 プロ野球が当初の縮小プランから地域おこし事業に大逆転したように、
 メディアが、IT社会での衰退から開かれた情報社会のフェアな担い手として
 大発展する起爆剤になれば、ホリエモンの挑戦は国民への思いがけない
 プレゼントになるかもしれません。


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