山﨑 養世の日本金融再生論
列島快走論と金融再生論の共通点
POINT.1 POINT.2 POINT.3
日本経済の本当の中心は、中小企業。ここに血液を流し込まなくては、日本経済は再生しない。
日本列島快走論は、地方の活性化の切り札として、高速道路を無料化したうえで、道路建設の権限と財源を都道府県に移すことが主眼になっています。「人が出ていく」「仕事がない」地方に、雇用と賑わいを取り戻すことが目的です。今回の金融再生論は、地方の中小・ベンチャー企業に資金が回る仕組みを創造しようというもので、地方から経済再生を呼び起こす点で目的は日本列島快走論と一致します。

中小・ベンチャー企業は、会社員の全雇用の7割を占めており、文字通り日本の社会と経済の中心です。現在、大手銀行の中小企業向け貸し出しは急速に減ってきており、ほかに資金調達の手がない経営者は窮地に追い込まれているのです。こうしたときに、本来中小企業を支えるのは、地銀や信金・信組などからなる中小・地域金融機関だが、ここもいまや余力はありません。日本の場合、大手銀行も中小・地域金融機関もビジネスモデルの点では大きな差はないのです。今後、ペイオフの実施や格付けの重視などの影響をうけて、中小・地域金融機関から大手銀行・郵便貯金に預金が流出する可能性は高いといえます。経営基盤が揺らいでいる中小・地域金融機関にも、新規の貸し出し先を開拓する能力は期待しにくいと言えるでしょう。
中小企業には回らず、霞が関経由で公的部門に回る「郵政資金350兆円」を証券化する
今回の金融再生論の主眼は、この一点に尽きます。考えてみれば、1000万円以下の一般国民の貴重な小口資金を約2万4000の郵便局のネットワークを使って集める郵便貯金・簡易保険の郵政資金は、一部は郵政公社の資金運用部門(とその委託先)で株式投資などに使われるものの、大半は財政投融資資金の原資として財務省に使い途を握られてしまっています。これこそ、全国津々浦々から東京にカネを吸い上げる一極集中の経済システムの典型であり、いまの姿では郵政資金が中小企業を救うルートがまったく存在しません。
郵政資金の最大の利点は、運用先が国への貸し付けと安全性の高い証券に限られていたため、銀行のような不良債権問題が存在しないことです。この優良資金を自分では証券を発行できない中小企業のために証券化を通して融通するのです。具体的な手法はやや専門的になりますが、資金運用全体を国や自治体といった公的部門から民間の安全性の高い証券に振り向ける「資金運用の証券化」だと考えていただければ結構です。この証券化構想の中心には、政府系金融機関からなる「大手買取金融機関」があります。郵政公社は350兆円の資金を元手にここから格付けの高い証券を購入し、一方中小・地域金融機関はここにローンを買い取ってもらう代わりに高利回りの証券の一部を購入します。このローンとは、一定の融資条件を満たして規格化した中小企業向けの「ローン・ポートフォリオ」の集合のことをさします。こうして、巨額の郵政資金が回りまわって、中小企業に流れ込んでいくのです。

郵政資金が金融の救世主となる
前へ戻る 次へ進む