「日本列島快走論」とは?
日本列島快走論の概要【1】 1 23
~道路公団の民営化はそもそも法律から逸脱している~

小泉政権は、「構造改革」の目玉として「道路四公団の民営化」を次の総選挙の公約に掲げるようです。しかし、その前にこうした民営化議論は、現在の高速道路の基本法である道路整備特別措置法と矛盾するもので、法律からの重大な逸脱であることを知っていただきたいと思います。欧米では高速道路は原則無料が常識です。日本も1950年代には、そうした常識から法律をつくり、高速道路の建設を始めました。ただ、その時には高速道路を作る財源が足りなかったので借金で作り、その借金を返すために有料で始めざるを得なかった。あくまで「特別措置」だったのです。本来の姿である無料化にならずに長い時間が経ったことが、現在の迷走の原因です。まずは「高速道路は無料が原則」という大前提から議論を整理したいものです。
現在の高速道路のあり方は「全国プール制」といわれ、東名や名神の利用者が、北海道や九州の路線の料金まで負担していますが、これは法律が禁止している「利用者が共通でない」路線に、共通の料金を取る制度です。法律で決めた「受益者負担」に反しています。それに道路整備特別措置法は、そもそも高速道路が無料に戻るための「償還主義」を基本にしています。路線ごとに費用はその受益者が払うことを原則にすれば、費用を料金で返し終えたら料金は徴収できません。これが償還主義です。

現在四公団で約40兆円の借金を抱えていますが、仮に民営化したとしても、この借金と将来の金利を加えた120兆円(50年間にわたって4%の金利で借り続けることができるという楽観的仮定に基づいても金利は80兆円になり、借金40兆円と合わせて120兆円になる)は、結局国民のツケになってしまいます。これは、金融機関が実態の分かりにくい子会社(公団の場合は保有・債務返済機構へ)に不良債権をこっそりと移す「飛ばし」と同じ手法です。つまり、民営化は根本的な解決にはつながらないのです。

アメリカ・イギリス・ドイツでは高速道路は原則無料ですし、有料であるフランス・イタリアでも料金は日本よりはずっと低額です(1~2割の区間は無料)。日本もアメリカの高速道路計画(インターステート計画)と同時に着手した1956年当初は、通行料金で路線ごとの建設費用を返済すれば、無料にする計画だったのです。それが、1972年の田中角栄内閣になって、それまでできていた名神・東名などの料金収入を新規の道路建設にまわす料金プール制が導入されました。わたしは、償還主義の基本に立ち戻り、欧米では当然のように実行され、国民生活の向上に寄与している無料化を新しい需要を起こして国民の気持ちを一新するために「日本列島快走論」と名づけて提起しています。
民営化は高速道路の有料を永久化するもので、それは法律からの逸脱を改めるチャンスを放棄することでもあります。巨大な債務を飛ばして民営化しても、料金収入に頼る経営では、新会社が生き残ることはまずありえないでしょう。
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