やはり皆さんが最も気になるのは、具体的な負担が増えるかどうかですよね。私がまず申し上げたいのは、
■ 1.新しい税金は必要ない
という点です。
高速道路無料化を実現するには、年間10兆円にのぼる既存の道路財源の一部を充てます。
年間10兆円という道路財源は国土が25倍のアメリカの13兆円に並び、ヨーロッパ最大級の道路予算を持つのドイツの4倍、イギリスの17倍にのぼります。こうした諸国は道路財源で高速道路も一般道路も整備し、高速道路は原則無料です。
■ 2.他の道路も税金で整備しているから無料です
英語では高速道路はフリーウェイです。無料が原則です。考えたら、日本の国道も県道も無料です。 その代わり幅広い人からの税金を用いて整備しています。
もし国道一号が有料だったらどうします?おとなしく払いますか?あなたが必ずしも国道一号の受益者ではありませんよね?
高速道路だけを有料に出来たのは料金所という関所からしか入れないからに過ぎません。料金所をなくして出入り口を増やして出入り自由にすれば自動車専用道路になるだけです。通行料金をとること自体が関所で人の通行を妨げた中世の発想です。
■ 3.いまの高速料金は受益者負担ではない
よく高速道路は受益者負担といわれます。
受益者負担とは、利益を受ける人がその費用を支払うという考え方です。もっともな考えです。民間のほとんどの経済取引は受益者負担の考え方に基づいています。
でも今の日本の料金制度は本来法律で決めた受益者負担からかけ離れたものになっています。
もともと、高速道路の基本法である道路整備特別措置法は、「通行料金は、路線ごとの建設費用をその路線の利用者への通行料金でまかなう」と決めています。これが受益者負担です。
ところが、この原則は1972年に田中角栄内閣が国会を通さずに「全国プール制」を導入したときに反故になりました。法律では、「料金を合算して徴収してよいのは二つ以上の路線の利用者が共通している場合だとしています。」
つまり、九州と北海道、東名と北陸など利用者が違う路線を一つにして料金をとってはいけないのです。
ところが全国プール制によって全ての高速道路が完成してそのための借金を返してしまうまで日本中の高速道路は、ひとまとめにして料金を取り続けることになったのです。
その結果、名神・東名の両高速道路は4600億円の建設費用をとっくに払い終わったのに7兆円を超える料金を取り続けているのです。利用しない、つまり受益しない遠く離れた高速道路の建設費用を払い続けているのです。
■ 4.受益者負担は途上国のプロジェクト・ファイナンスの考え方
金利を含めた建設費用を料金で回収し、払い終わったら無料にするというのは財源がない場合の公共分野のプロジェクト・ファイナンスとしては一般的であり、途上国の高速道路の多くはこうした手法で作られています。
復興途上国だった1956年の日本が世界銀行つまり海外から借金してこのプロジェクト・ファイナンスの手法で資金調達したのは理にかなっていたのです。
しかし、経済大国になり、巨額の道路財源ができた時点で原点に戻って、道路財源で高速道路を整備すべきだったのです。
■ 5.財政資金に切り替えなかった日本
先進国の多くが高速道路を財政資金で整備し国民に無料で提供する大きな理由は、借金で作れば金利費用が高くなって国民負担が増えるからです。
日本のように今まで50年近く、そしてこれからの50年も借金で高速道路の建設を進めれば金利のほうが建設費よりも多くなります。
すると料金が高くなり利用者が減少し、ますます返済が伸びてさらに金利負担が重くなる、こんな多重債務者状態を続けていこうというのが民営化です。もちろん世界一高い料金を取り続けるのです。
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