道路関係4公団の民営化にあたって新たな道路建設にかかる費用などに焦点があてられている。しかし、新規の建設費用は7~10兆円で、公団の抱える借金40兆円と比べればたいした問題ではない。
道路公団問題の最大のテーマは40兆円もの借金にある。その借金が今、政府・与党民営化法案で密かに飛ばされようとしている。
政府・与党の示す民営化法案は、国の特殊法人「日本高速道路保有・債務返済機構」に借金と道路資産を継承するという、実質的に借金の棒引きを促す制度となった。
政府の民営化のスキームでは、借金と道路資産を機構が保有し、40兆円の借金は、機構が民営化会社から受け取る高速道路のリース料金によって返済していくこととなっている。
リース料金の原資は通行料金だ。例えば通行料金を値上げすると、交通量の減少につながるため収入の増加は期待できない。
もしも、借金そのものの返済能力が機構になくなった場合や、借金がさらに膨らんだ場合はどうやって返済していくのか。
結局は、税金を投入することになり国民負担となるしかないのだ。
一方の民営化会社は、借金がなくなることで「儲け」に専念できることになるのだが、借金という負の遺産が機構に移ったことで経営はやりたい放題になる。
民営化を進める中で、急に国土交通省が直轄事業として新規道路建設を行うことになったのも、道路建設を死守したい政府の意向が大きく表われている。
これでは、経営効率を図ろうというインセンティブもガバナンスも働かなくなることは目に見えている。
機構に借金を移すことは、かつて金融機関が借金を隠して飛ばしていたこととなんら変わりない。実体は何も変わらないのだ。道路公団の民営化では、40兆円もの借金を飛ばすという至上最大の経済犯罪を犯すことになる。
40兆円の借金を民営化会社から切り離し、機構に負担させることは、公団から国民への借金の「飛ばし」に等しい。
現在の40兆円の借金は、新規道路建設にかかる新たな借金や金利負担を考えると、将来100兆円にもなる可能性が高いのだ。
これを、そのまま国民負担にさせてしまうような民営化を許してはいけない。