【第11話】法律を無視して作ったプール制の弊害 | 2004年06月07日更新 |
1972年、田中角栄首相(当時)によって、国会を通さずに政令によって「料金プール制」が導入された。料金プール制とは、「1本の道路の単独収支とせずに、全ての道路を1本の道路とみなして収支を決算する」制度だ。通行料金や償還期間(料金収入によって借金を返済する期間)は、国土交通省が認可すれば変更が効く。 角栄は当時、「裏日本」と「表日本」と言われいたような地域経済の格差を是正しようと「日本列島改造論」を唱えていた。経済を活性化させるため、高速道路網の整備を急ぎ、一時的措置として料金プール制をしいたのであった。 しかし、結果はどうだったか。 角栄の造った高速道路は、都市部と地方の格差をなくすというスローガンとは逆に、国土の3%ほどの都市部近郊に人口の80%が住むという、東京一極集中を招いたではないか。都市部の地価は上昇し、勤務地近くに住むことは難しくなった。そのため、日本人の平均通勤時間は往復で2時間を超えるという有り様だ。一方、ドイツの平均通勤時間は約40分。日本人は、ドイツ人よりも1時間20分も、ただひたすら満員電車の中で身をすり減らすような時間を無駄に過ごしていることになる。睡眠時間と勤務時間、通勤時間を除くと、いったい、自分の時間はどのくらい残るのだろうか。 また、地方では通勤などの交通機関として自動車の依存度は高い。例えば秋田県では、県民の自動車依存度は97%にも上る。しかし、地方の所得は都市部と比べると低いことから、高速道路の料金負担は家計を圧迫する。自動車依存度が高いのに、高速道路をなかなか使えないという矛盾が起きている。 この現象は、インターネットの料金制度と似ている。インターネットが出だした頃は、料金は重量制が多く、なかなかサービスを使おうという人は増えなかった。しかし、料金定額制や無料サービスが開始されてからは爆発的にインターネット加入者が増加したではないか。高速道路もこれと同じで、「何キロ走ったからいくら」という制度を続けていたのでは、使いたいのに使えない人を放置しておくだけである。 角栄が描いたバラ色の地域経済の拡大は、皮肉にも、料金プール制によって全く違うものとなってしまっている。 |