【第5話】民営化のからくり(4) 詐欺まがいの上場 | 2004年05月27日更新 |
政府・与党の道路公団民民営化案では、道路公団を民営化した後、上場するというが、40兆円もの借金を抱えた企業が上場などできるのだろうか。まず、自己資本比率規制の問題を誰も指摘していない。時価総額が国内最大のトヨタ自動車ですら、2004年3月期の売上高約17兆円、最終利益約1兆円に対して、有利子負債は7兆円程度。自己資本比率は37.1%だ。 上場会社には、株主の利益を追求する責任がある。道路公団の場合が上場する場合、債務圧縮は必至であり、その上、配当や株価上昇という形で株主還元しなければならない。一方で、公団のコアとなる収入源が料金であるのに、政府は「道路料金には利潤を見込まない」と料金値下げ案まで打ち出し、債務返済後は無料開放とさえ言っており、極めて矛盾した形になっている。 道路以外の事業である、サービスエリア(SA)、パーキングエリア(PA)の売上は約3000億円で、仮に営業利益率が10%だとしてもわずか300億円の利益しか上げられない。収益の確保が極めて不安定だ。仮に、SA・PAなどの関連事業を収益の柱とするならば、鉄道でいうところの「KIOSK」を上場させ、鉄道本体の運営をさせるというに等しく、滑稽ですらある。 さらに重要な問題がある。公団は45年後には借金を返済して、高速道路を無料開放することとなっている。これは、同時に45年後には料金収入がゼロになることを意味している。売上のほとんどがゼロになる企業が上場しているなどあり得ない。売上の大半を失うということは、事業の継続性が問われることになる。近い将来、「紙クズ」同然となる株を国民に売りつけるというのか。公団の上場には、金融当局、証券取引所、引き受け会社の責任につながる。 将来売上のほとんどが消滅するリスクの高い会社を上場させる責任を、いったい誰が負うのだろうか。 |