山崎 Voice Now
【第18話】無料化は農林水産業復活の切り札 2004年06月16日更新

日本は年間7兆円もの額の農林水産物を輸入している世界一の食料輸入大国となっている。しかし、こういった形で21世紀も食料を輸入し続けることができなくなるのは明らかだ。日本が将来は、工業製品のモノ作りをどんどん中国に移転しており、それは、中国で作られた製品が将来日本に輸入されるようになることを意味している。しかも、石油などの一次産品の価格は上昇基調にある。従って、21世紀の日本は、余りある貿易黒字の時代に終わりが告げられるため、食料自給率を高めることが必至となる。 
今、日本の食料自給率はわずか40%程度と、30年前の60%から20%も低下しているのだ。その一方で、1970年に68%だったドイツの食料自給率は今ではほぼ100%。イギリスは1970年に46%だったのが今では60%・・・。今後、日本の食料自給率の向上は重要な政策課題となる。国民の「食の安心・安全」に対する関心も高い。「食べる」ということへの教育、田園からの観光産業化など、農林水産業の果たす役割は大きい。

そういった意味で、高速無料化と同時に提唱しているのが、「田園からの産業革命」である。日本の農業が自立していくための、消費者と生産者を結ぶバリューチェーンを充実させることで、農林水産業は大きく成長する。しかし、そのときに大きな壁となるのが、日本の物流コストの異常な高さだ。野菜を運ぶにも、米を運ぶにも、トラックが主たる輸送手段となる。それなのに、日本は世界一高い高速料金を払わされているため、物流コストが生産物の価格に大きくのしかかり、農林水産業の発展を大きく邪魔をしているのだ。

逆に言えば、高速料金が無料となれば、地方からの生産物がより安く消費地帯に運ばれ、地産地消の動きも活発になる。さらに、日本の農林水産物は質が高いことで海外から高い評価を受けている。特に、中国では日本産の農作物の人気は高く、高速料金が無料であれば、空港までの輸送手段として高速がより使用されることにもつながり、より安い価格で商品を提供することが可能となるのだ。高速無料化が農林水産業に与えるインパクトは絶大であろう。

バックナンバー
【最終話】知事の時代が来る
【第22話】審判とプレイヤーは別に
【第21話】公団廃止、職員はどうなるの?
【第20話】広がる交通手段
【第19話】無料化が生活大国を作る
【第18話】無料化は農林水産業復活の切り札
【第17話】無料化の経済効果
【第16話】年金・簡保への影響なし
【第15話】今がチャンス、国の肩代わり
【第14話】連結決算で財政再建も
【第13話】どうやって高速道路を無料にするの?
【第12話】アクアラインが無料になれば‥
【第11話】法律を無視して作ったプール制の弊害
【第10話】一時的措置のはずの有料制
【第9話】米英独は高速無料で公団もないって知ってますか?
【第8話】料金と税金の二重取り
【第7話】公共事業と政治家
【第6話】経営多角化という独占
【第5話】民営化のからくり(4) 詐欺まがいの上場
【第4話】民営化のからくり(3) 公団の粉飾決算
【第3話】民営化のからくり(2)‐II 借金の怖さ
【第2話】民営化のからくり(2)-I 吸収できない40兆円の借金
【第1話】民営化のからくり(1) 借金の飛ばし