【第15話】今がチャンス、国の肩代わり | 2004年06月11日更新 |
国が国債発行によって道路四公団の借金を肩代わりするのは、歴史上稀にみる低金利時代にある今がチャンスだ。国債発行による借り換えは、財政負担の大きな軽減にもつながる。ただし、低金利で国が借金の肩代わりを行うことができるのは、貿易黒字で債権国のうちでなければ実現しない。 親会社(国)が健全で体力があり、子会社(道路四公団)の借金がこれ以上膨らまないうちに債務処理する必要がある。しかも、その借金の処理の仕方は、政府が闇から闇に、国民が分からないように進めるのではなく、どんな手法で、どれだけの借金を処理したかを公開する必要がある。国債発行によって肩代わりする場合、その国債償還にかかる財源は、これまで高速道路には使われてこなかった高速道路ユーザーからの税金を充てることになるわけだから、税金の使い方が国民に明らかになる利点もある。高速道路ユーザーから取った税金を一般道路につぎ込んできたことが、高速道路建設を延ばし延ばしにしてきた最大の原因で、それが国民の知るところとなるのだ。 借金の肩代わりは、低金利のうちに実行しなければ意味がない。政府の民営化は、借金返済を先送りしている。しかも変動金利で、この先40年も50年も借金を持ち続けるスキームとなる。政府では、金利はずっと4%という甘い予想をしているが、いつまでも低金利である保証はない。そればかりか、極めて高い確率で金利は上昇すると予想される。 金利上昇の要因の一つは少子高齢化。少子高齢化が進むことで、2015年までに高齢者は1000万人増え、労働者は900万人減少。労働人口の減少は、財政を直撃するだけでなく、日本が生産国から消費国となることを意味し、輸出が減って輸入が増えることになる。すると財政・貿易の両方が赤字になる。加えて、一次産品の価格上昇が金利に与える影響も大きい。これらは既に米国で実証済み。米国が世界最大の債権国であった1960年代、金利は4%程度であった。しかし、双子の赤字となった1980年代の金利はオイルショックの影響もあって16%まで跳ね上がった。日本はかつての米国が歩んだ道と類似した状況にある。高金利となれば、道路公団の借金返済は不可能となる。日本の少子高齢化に歯止めはかかりそうにない。どう考えても、少子高齢化の本格化や中国進出による貿易構造の変化が起こる前の今が、借金問題を処理できる最後のチャンスとなる。 先送りする余裕はない。今、実行する以外に選択肢はない。逆に、今実行してしまえば、今後、日本の経済は好循環にさえなるのだ。低金利の今こそ、借金を肩代わりする最後のチャンスだ。 |