政府・与党の道路公団民営化法案では国の特殊法人「日本高速道路保有・債務返済機構(機構)」が債券を発行して資金調達を行う仕組みを取り入れている。しかし、機構による債券発行は非現実的だ。
40兆円にのぼる公団の債務と高速道路資産を持つことになる機構は、負債と資産規模では日本最大の会社となる。その機構が債券を発行するということは、民間会社で最大の額の債券を発行することを意味する。
2003年度(3月26日現在)の普通社債発行額は合計150社で6兆9927億円となった。
約7兆円の債券市場では、公団の債券は吸収できるはずがない。公団が社債を発行するということ自体が非現実的だ。
しかも、公団の債券には、政府保証をつけることになっている。
政府保証を付すことは、借金の返済責任を国民に負わせることに等しい。政府保証債の発行は年間で約9兆円で、40兆円もの債券を一時に発行することはできない。そもそも、政府保証債で永続的に資金調達するのであれば、民営化とは呼べないのだ。
しかも、国に財政リスクを負わせ、会計上も負債となる政府保証債の発行は、性格的には国債と同じではないだろうか。
政府保証債という言葉に国民は騙されてはいけない。
民営化や資金調達という、もっともらしい言葉の裏には、借金をゆくゆくは国民負担にしてしまい、高速道路は永久有料化しようという政府の魂胆が見え隠れしているのだ。
そして、政府保証債は発行しても、実は、それを吸収できる市場能力がないという、始めから不可能な資金調達方法なのである。
また、返せないと始めからわかっている国債を発行し、料金を取り続けるより、当初から国債発行を発行して高速道路を無料にする方が、国民負担はずっと軽くなることを指摘したい。