山崎 Voice Now
【第3話】民営化のからくり(2)‐II 借金の怖さ 2004年05月25日更新

政府・与党の道路公団民営化法案では、40兆円の公団債務を45年かけて返済していこうという超長期的な計画となっている。
しかし、40兆円もの借金とその金利負担についての議論が欠けている。
返済期間が極めて長いうえ、変動金利で借金をしているため、今後、何度も金利の改定がされることが無視されている。
政府が計画する債務が完済する2050年頃まで、はたして金利が年4%に留まっているかは疑問である。
将来の金利変動リスクを負うことを前提とする点は致命的だ。

今、歴史的な低金利状態にあるが、2010年頃から財政は悪化することが予想される。その上、少子高齢化、原材料費の世界的な上昇、中国経済の成長などを背景に、高い確率で長期金利は上昇するはずだ。実際に、財政赤字が深刻化した頃の米国や、バブル期前の日本の金利水準は、今の日本よりはるかに高かった。米国の場合、1960年代の金利は4%程度だったが、その20年後、オイルショックや財政赤字などから金利は16%まで跳ね上がった。今の日本は、米国がたどった道を酷似している。国内で金利が上昇しない保障など、どこにもない。

仮に、将来の金利が今後45年間平均4%だとしても、元利返済合計は84兆円。もしも平均金利がバブル崩壊前の金利と同じ8%へ上昇すれば借金は134兆円に膨れあがり、新たに50兆円が国民負担となることになる。
世界一高い高速道路料金(年2.5兆円)を今後45年間取り続けても112.5兆円程度。料金収入で借金を返済することができず、破綻――134兆円との差額はいずれ国民負担となってしまう。この負担額は消費税約20年間分の税収に当たる。
さらに、金利が14%まで上昇した場合、現在の公的年金の積立金に等しい141兆円もの新たな国民負担が発生する。

こうした巨大な国民負担が発生する確率が極めて高いにもかかわらず、政府は民営化案には国民負担が発生しないと説明しているのである。
一般庶民には想像もつかないような多額の借金。国民への重大な情報の説明責任を政府は果たしていない。

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【第5話】民営化のからくり(4) 詐欺まがいの上場
【第4話】民営化のからくり(3) 公団の粉飾決算
【第3話】民営化のからくり(2)‐II 借金の怖さ
【第2話】民営化のからくり(2)-I 吸収できない40兆円の借金
【第1話】民営化のからくり(1) 借金の飛ばし