山崎 Voice Now
【第9話】米英独は高速無料で公団もないって知ってますか? 2004年06月02日更新

日本では、道路公団という組織が高速道路建設を行い、高速道路の料金を徴収している。しかし、世界を見てみるとアメリカにもイギリスにもドイツにも、公団など存在せず、料金は無料となっている。

例えばドイツでは、1930年代に世界最初の無料の高速道路網であるアウトバーンが完成した。アウトバーンは国民の移動時間を飛躍的に短縮させ、地方を結びつけて国民経済を急速に発達させた。ドイツはワイマール共和国の破綻からわずか5年でヨーロッパ最強の国家として復活した。

第二次大戦中に連合軍最高司令官としてドイツでアウトバーンの威力に衝撃を受けたアイゼンハワー大統領が、アメリカにも全国無料の高速道路網であるインターステートの建設を開始したのが1956年だ。全国の交通アクセスを飛躍的に改善して地方分散を進め、大都市での過密、交通事故、大気汚染などを減少させることを目的とした。

インターステートはアメリカの黄金時代をもたらした。郊外に住宅や企業やショッピングセンターを立地することが可能になり過密と過疎が大幅に解消した。輸送・生活コストが大幅に低下し消費が増えビジネスは拡大した。鉄道網のない西部、南部の諸州が大発展し新しい産業が興った。
70年代までのアメリカの経済成長の4分の1がインターステートの建設によってもたらされたといわれる。
現在ではフォーチュン500の大企業でニューヨークに本社を構えるのは1割にも満たない。上場企業の7割が依然として東京に立地せざるを得ない日本とは大きな違いである。

世界の先進国では、公団という組織なしに高速道路を無料にすることによって経済を発展してきている。それなのに、日本では、依然として公団組織が保たれ、料金は世界一高い水準で徴収され続けている。

昨今、EUの拡大などにより、全く税金を払わない外国の大型トラックがアウトバーンを痛めるから、ドイツがそうした重量車両への課金を検討したり、ロンドンの一部で混雑緩和のために中心市街地(一般道路)への流入に課金(ロードプライシング)を導入していたりする。しかし、米英独という日本が経済モデルとしてきた国では、無料が基本であることを押さえておく必要がある。そして、過密と過疎の解消という20世紀から積み残されている課題の解決のためには、日本では高速無料化が不可欠だ。

バックナンバー
【最終話】知事の時代が来る
【第22話】審判とプレイヤーは別に
【第21話】公団廃止、職員はどうなるの?
【第20話】広がる交通手段
【第19話】無料化が生活大国を作る
【第18話】無料化は農林水産業復活の切り札
【第17話】無料化の経済効果
【第16話】年金・簡保への影響なし
【第15話】今がチャンス、国の肩代わり
【第14話】連結決算で財政再建も
【第13話】どうやって高速道路を無料にするの?
【第12話】アクアラインが無料になれば‥
【第11話】法律を無視して作ったプール制の弊害
【第10話】一時的措置のはずの有料制
【第9話】米英独は高速無料で公団もないって知ってますか?
【第8話】料金と税金の二重取り
【第7話】公共事業と政治家
【第6話】経営多角化という独占
【第5話】民営化のからくり(4) 詐欺まがいの上場
【第4話】民営化のからくり(3) 公団の粉飾決算
【第3話】民営化のからくり(2)‐II 借金の怖さ
【第2話】民営化のからくり(2)-I 吸収できない40兆円の借金
【第1話】民営化のからくり(1) 借金の飛ばし