山崎 Voice Now
[第13話]どうやって高速道路を無料にするの? 2004年06月09日更新

現在、高速道路が有料となっているのは、道路建設にかかった費用を、道路公団が料金収入によって返済すると決められているからである。
借金がなくなれば自動的に無料開放されることになっている(償還主義)。
そこで問題となるのは、
 1.どうやって40兆円もの借金を返済するのか、
 2.財源はどうするのか、
という2点に尽きる。

借金は、一度に返済することはできない。政府・与党の民営化方式では、年間約2.5兆円程度の料金収入を原資に、40年も50年もかけて借金を返済するため、いつまでも料金は無料にはならない。借金返済の最も現実的で、かつ、コストを最小限に抑えることができる手法は、国の固定金利での国債発行による債務の借り換えだ。

民営化して民間債にするのは不可能だ。市場全体の年間発行額が7兆円しかないからだ。残る手段は、年間発行160兆円という巨大市場を持つ国債しかない。

借金返済のスキームとして、民営化と国債による借り換えを比べてみよう。
民営化では、変動金利のため金利が上昇すれば、借金は元利合計で100兆円を軽く超えるなど、想像もつかないような金額に膨れ上がる危険性が極めて高い。
一方の、国債による借り換えならば、低金利のうちに固定金利で借り換えることが可能となる。借金の元利返済合計も、完済するまで55~60兆円に抑えられる。もともと、道路公団が抱える40兆円もの借金の大半が金利負担であることを考えれば、将来の金利負担を軽減する措置を実行したほうが明らかにメリットが大きい。

無料化すると同時に料金収入はなくなるため、どうやって国債を償還するのかという疑問の声もあるだろう。しかし、その財源は、実は豊富にあるのだ。
自動車ユーザーはガソリン税など年間9兆円強もの自動車関連の税金を納めている。そのうち約3割を高速道路ユーザーが負担しているにもかかわらず、そのお金は高速道路には使われず、一般道路建設や保守・管理費として使われている。その3兆円足らずを、一般道路に使うのではなく、本来使われるべき高速道路関係に向ければ、それまでの通行料金収入約2.5兆円がなくなっても、十分にやっていける。

このように、国の国債発行による債務の借り換えという考え方を導入すれば、増税なしに借金返済が済み、ただちに高速道路の通行料金は無料となる。

バックナンバー
【最終話】知事の時代が来る
【第22話】審判とプレイヤーは別に
【第21話】公団廃止、職員はどうなるの?
【第20話】広がる交通手段
【第19話】無料化が生活大国を作る
【第18話】無料化は農林水産業復活の切り札
【第17話】無料化の経済効果
【第16話】年金・簡保への影響なし
【第15話】今がチャンス、国の肩代わり
【第14話】連結決算で財政再建も
【第13話】どうやって高速道路を無料にするの?
【第12話】アクアラインが無料になれば‥
【第11話】法律を無視して作ったプール制の弊害
【第10話】一時的措置のはずの有料制
【第9話】米英独は高速無料で公団もないって知ってますか?
【第8話】料金と税金の二重取り
【第7話】公共事業と政治家
【第6話】経営多角化という独占
【第5話】民営化のからくり(4) 詐欺まがいの上場
【第4話】民営化のからくり(3) 公団の粉飾決算
【第3話】民営化のからくり(2)‐II 借金の怖さ
【第2話】民営化のからくり(2)-I 吸収できない40兆円の借金
【第1話】民営化のからくり(1) 借金の飛ばし